多発血管炎性肉芽腫症 - 病院・医院・薬局情報

多発血管炎性肉芽腫症とは、血管に対して異常な自己免疫反応を起こす疾患の一つで、「血管炎症候群」に属する病気です。
2012年に「ウェゲナー肉芽腫症」から「多発血管炎性肉芽腫症」に名称が変更されました。

以前は有効な治療法がありませんでしたが、現在では、早期発見・治療によって寛解(一時的に病状が軽くなる状態)へ導くことが可能になっています。

多発血管炎性肉芽腫症の原因

明らかな原因はわかっていません。しかし、抗好中球細胞質抗体(ANCA)という好中球(白血球の一種)に対する自己抗体の一つである「PR-3 ANCA」が、病気の発症・進行に関与していると考えられています。

多発血管炎性肉芽腫症の症状

多発血管炎性肉芽腫症では、発熱や全身倦怠感、食欲低下、体重減少などの全身症状とともに、上気道や目に関連した症状、肺に関連した症状、腎臓に関連した症状があらわれます。

全身症状

発熱や全身倦怠感、食欲低下、体重減少など

1. 上気道や目に関連した症状
   持続する鼻血や鼻水、鼻の変形、耳の痛み、難聴、中耳炎、のどの痛み、視力低下、眼球突出など
2. 肺に関連した症状
   痰に血が混じる、咳が出る、息が苦しい、呼吸困難など
3. 腎臓に関連した症状
   血尿、尿が少なくなる、タンパク尿、急速に進行する腎障害、全身のむくみ、高血圧など

症状は通常①→②→③の順序で起こり、①②③すべての症状が揃っているときを「全身型」、いずれかの症状のみのときを「限局型」といいます。
その他の症状として、神経障害や皮膚の血管が障害をうけ、しびれや紫斑などがでることがあります。

多発血管炎性肉芽腫症の治療方法

治療には大きく2つの段階があります。

寛解導入療法

異常な免疫反応を是正して病気の勢いを抑え、寛解状態を目指す治療。
全身の炎症の程度や、腎炎の有無、重症度に合わせて適切な治療方法が決定されます。使用される主な薬剤は、炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイド薬や、免疫抑制薬、そして生物学的製剤などが使われます。

寛解維持療法

寛解後も再発しないように病気の勢いの落ち着いた状態を保つための治療。一般的には、低用量のステロイド薬と免疫抑制剤が使用されます。

日常生活で気をつけること

多発血管炎性肉芽腫症で治療している患者さんは、ステロイド薬や免疫抑制薬を服用しているため、免疫力が低下して、感染症にかかりやすくなります。
そのため、感染症にかからないよう、手洗い・うがいなどを心がけ、ストレスのかからない規則正しい生活を送ることが大切です。

また、薬の飲み忘れや、自己判断で中断することは病気の再発につながる可能性があるため必ず主治医の指示に従いましょう。