お医者さんと治そう 慢性頭痛

[薬物乱用頭痛について/広南病院]

薬物乱用頭痛について

広南病院

患者さんへのメッセージ

頭痛外来医長 松森 保彦 先生

私は、「良くならない頭痛はない」と思っています。頭痛を「0」にするのは難しいですが、しっかり診断をした上で、それに合った薬物治療や医療介入をすることによって、ほとんどの患者さんが良くなると実感しながら日々診療しています。
実際、約60年間毎日鎮痛薬を飲んでいたおばあちゃんがいましたが、お話を良く聞いて治療を行ったところ、薬物乱用頭痛がなくなり、もとの片頭痛だけになり、月に数回の鎮痛薬だけで頭痛のコントロールができるようになりました。
このように、治療を始めることに遅すぎることはありませんが、「頭痛なんかで病院にいっていいのか」と思わずに、頭痛で困ったら気軽に頭痛外来を受診して下さい。
一人ひとりにあった、より良い治療法があります。人生が変わりますよ!!

薬物乱用頭痛について教えてください
もともと何らかの頭痛がある方で、頭痛薬の飲み過ぎにより、かえって頭痛が悪化した状態を「薬物乱用頭痛」といいます。鎮痛薬などの薬の過剰服用が引き金となり、痛みに対する感受性が過敏になってしまうことが原因と考えられています。市販鎮痛薬でも起こりますが、医師から処方された薬でも起こってしまいます。
当院頭痛外来では、もともとの頭痛は約85%が片頭痛で、原因となった薬の約50%が医療機関から処方されていた、というデータがあります。いろいろな頭痛の中でも、より生活支障度の高い片頭痛がきっかけになっていることが多く、また、漫然と鎮痛薬が処方されている可能性があると考えられました。
頭痛薬を普段から月に10~15日以上服用しており、「朝起きた時から頭痛がする。」「以前は効いていた頭痛薬が効かなくなってきた。」「1ヶ月に15日以上頭痛がある。」などの症状がある方は、薬物乱用頭痛の可能性があります。

診察ではどんなことをお聞きしますか
いつごろからどんな薬をどのくらい服薬しており、その期間はどのくらいなのか、薬の効き具合はどの程度であるかなどをお聞きします。
また、薬物乱用頭痛が起きる前(頭痛が悪化する前)の、もともとの頭痛はどんなものであったか、どんな痛みか、頭痛の頻度や程度、頭痛以外の症状、頭痛が起こりやすい状況、何歳頃から頭痛があるか、などをお聞きして、薬物乱用頭痛になったきっかけの頭痛を診断します。

治療はどのように進められますか。
まずは薬物乱用頭痛の原因となっている薬を中止します。同時に、きっかけになった頭痛に合った頭痛予防薬を開始します。また、薬をやめた直後は、反跳頭痛といって数日間ほど今までよりもつらい頭痛が出現することがあり、この時期は今までと違った種類の鎮痛薬などを使用し乗り切るようにしていきます。場合によっては入院して治療することもあります。
治療期間中は、頭痛の頻度や程度、服薬状況などを頭痛ダイアリーに記入してもらい、治療の効果を確認しながら診療を進めていきます。またこの頭痛ダイアリーは、患者さん自身にとっても自分の頭痛を把握することができるのでとても有用です。
実際私は、薬物乱用頭痛の治療が終了した別の患者さんの頭痛ダイアリーをお見せし(もちろん個人情報には十分配慮して)、前もって予想される治療経過について説明することがあります。「原因になっていた薬をやめたら数日間、頭痛がひどくなってますね。これが反跳頭痛です。」「でもこの時期を乗り切ったら、頭痛が減ってきていますね。」「だんだんもとの片頭痛だけになってきて、頭痛は月に数回になってますね。」など、自分の今後の治療過程をイメージしてもらうことは、しばしば長期間にわたる薬物乱用頭痛の治療を成功させる上で大切なことだと考えています。

また、薬物乱用頭痛の患者さんは、精神的に参っている方も多く、当院では患者さんの約90%に抑うつ状態がみられた、という結果があります。頭痛と抑うつは共存症という関係にありますので、頭痛の治療で精神疾患も良くなることもありますが、精神科や心療内科の先生と一緒に診療していく場合もあります。
広南病院・外観広南病院
宮城県仙台市太白区長町南四丁目20番1号
TEL:022-248-2131
http://www.kohnan-sendai.or.jp/
頭痛外来医長 松森 保彦

「慢性頭痛」は立派な病気です。頭痛の専門医に診てもらえれば、痛みをコントロールすることができます。
「頭痛で病院にいくなんて・・・」などと思わずに、日常生活に支障がでる頭痛があれば、我慢せずに頭痛外来を受診しましょう。