脳内出血の原因・症状・治療法と予防のポイントを解説
医師紹介
脳内出血とは
脳内の血管になんらかの問題が生じて出血をきたす疾患です。脳内出血を起こすと、脳内の血流が滞り、それによって脳細胞が損傷することで、頭痛や吐き気、感覚麻痺、言語障害など、さまざまな症状があらわれます。重症の場合は命にかかわることもあります。
原因
最も多い原因は高血圧です。血圧が高い状態は血管に負担がかかるため、その状態が続くと、血管がもろくなり、破れて脳内出血を起こします。血圧の正常値(正常血圧)は、120/80mmHg(家庭で測定した場合は115/75mmHg)と定義されており、血圧が高くなるほど脳内出血を起こす確率は高くなります。
そのほかにも、血管自体の異常(動静脈奇形、海綿状血管腫など)や脳腫瘍などによって起こることもあります。
症状
あらわれる症状は、出血する部位によって異なります。主な症状は以下の通りです。
〇 主な症状
- 頭痛
- 手足が動かしにくい(運動麻痺)
- 手足の感覚が鈍い / しびれ(感覚障害)
- めまい
- ふらつき
- ものが二重に見える
- 目や瞳孔の動作異常
- 呂律が回らない
- 言葉がでない
- 吐き気
- 意識を失う
など
このような症状があるなど、脳内出血が疑われる場合は、救急車を呼ぶなどして至急、専門の医療機関を受診しましょう。
検査・診断
問診や診察で症状の有無を確認します。脳内出血の疑いがあれば、まずはCT検査で脳の画像検査を行います。CT検査で明らかな異常がみられない場合には、さらにMRI検査を行うこともあります。診断が確定した後は、血液検査やMRI検査などで、脳内出血が起きた原因を詳しく調べます。
治療・治療後の注意
脳は一度損傷を受けると回復が難しいため、後遺症を残すことが多くあります。後遺症を最小限にするためには、早急に治療を受ける必要があります。症状があらわれてから2時間程度までを目安に、できる限り早く医療機関を受診することが重要です。
治療は主に「薬物治療」「内視鏡治療」「外科的治療」「リハビリテーション」です。
薬物治療
血圧を下げることが最も重要なため、血圧を下げる薬などを使って血圧をコントロールします。そのほか、必要に応じて出血を止める薬(止血剤)などが使われます。一方で、血液をサラサラにする薬 (抗血小板薬、抗凝固薬) は、止血の妨げになるため、使用している場合は中止します。
外科的治療
出血量が多い場合や薬物治療のみでは不十分な場合は、手術が可能な部位であれば、出血の塊を取り除く手術(血腫除去術)が行われます。頭部を大きく切開して行う開頭手術と、頭部に小さな穴を開け内視鏡や手術部位を固定する専用の器具を用いて行う(定位的脳内血腫除去術)方法があります。
リハビリテーション
麻痺などの後遺症がある場合は、リハビリテーションの治療によって、機能の回復と維持につなげることが重要です。立ったり座ったりの動作のための「運動療法」、箸を使ったり字を書いたり日常生活の細かな動作のための「作業療法」、話したり飲み込んだりする動作のための「言語療法」など、状態によって必要なリハビリテーションを行います。
予防
最も多い原因は高血圧であるため、予防・再発予防には血圧のコントロールが特に重要です。高血圧の原因は、塩分の過剰摂取や肥満、飲酒、喫煙など、生活習慣と密接に関係している要因が多いため、健康的な食事習慣や適度な運動習慣、禁煙など、生活習慣を整えることが予防につながります。このように生活習慣を整えても、血圧のコントロールがうまくいかない場合には、薬物治療で血圧コントロールすることで予防をします。
医師紹介
2003年 聖マリアンナ医科大学病院、2004年 西島病院(2009年より救急診療部副部長、2010年より救急診療部部長)、2015年 三友堂病院(2015年より脳神経外科科長、2016年より救急部(HCU)部長)、2023年 三愛会総合病院。脳神経外科専門医(日本脳神経外科学会)、脳血管内治療専門医(日本脳神経血管内治療学会)、脳卒中専門医(日本脳卒中学会)、認定医(日本脊髄外科学会)、脊椎脊髄外科専門医(日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会)、救急科専門医(日本救急医学会)、高気圧医学専門医(日本高気圧環境・潜水医学会)、認定産業医(日本医師会)。専門分野は脳卒中、血管内治療、救急診療。