臍帯(さいたい)ヘルニアの原因・症状・治療法と予防のポイントを解説
医師紹介
臍帯(さいたい)ヘルニアとは
胎児が胎内にいる間に、おなかの壁(腹壁)が正常につくられず、穴ができてしまうことで、その穴から胃や腸、肝臓などの臓器が身体の外に露出した状態で生まれてくる疾患です。似ている疾患名に「臍(さい)ヘルニア」がありますが、これはいわゆる「でべそ」で自然に治ることが多く、臍帯ヘルニアとは重症度がまったく異なります。
原因
胎内でおなかの壁(腹壁)がつくられるのは、妊娠3週~4週頃の早い時期です。この過程で何らかの異常があり、おなかの壁(腹壁)に穴ができてしまうことによって起こります。ただし、この異常が起きる原因はわかっていません。
症状
胎児のおなかにできた穴から、胃や腸、肝臓などが身体の外に露出した状態で生まれてきます。臓器が露出している部分から体温が下がったり、水分を失ったりするリスクがあり、低体温症や脱水症状などが起こることもあります。
露出している臓器は、ヘルニア囊(のう)という腹膜や羊膜といった半透明の薄い膜で覆われているので、実際には外気に触れるような露出をしているわけではありません。膜が破れるなどして、臓器が外気に触れるような露出をしている場合は腹壁破裂と呼ばれます。
また、以下のようなさまざまな染色体異常や奇形をともなうことがあります。
染色体異常
13トリソミー / 18トリソミー / 21トリソミー など
奇形
心室中隔欠損症 /ファロー四徴症(しちょうしょう) / 横隔膜欠損症 / 鎖肛 / 仙骨奇形 / 脊髄髄膜瘤 / 膀胱異常 など
検査・診断
臓器が露出している状態ですぐに診断がつきます。染色体異常や奇形をともなうことが多いため、臍帯ヘルニアとわかった時点で心臓の超音波(エコー)検査や血液検査による染色体検査を行うことがあります。
治療・治療後の注意
生まれる前に診断された場合でも、胎内にいる間は慎重に経過を観察するのみで、治療はできません。ただし、生まれたらすぐに適切な治療ができるように、必要に応じて、新生児科や小児外科など、臍帯ヘルニアや合併する疾患に対応できる医療や設備が整った医療機関への転院を検討します。
生まれたあとは、なるべく早い時期に、露出している臓器をもとの位置に戻す手術が行われます。露出している臓器の量や種類によって、1回の手術で行うか複数回に分けて行うかが検討されます。手術を分けて行う場合でも、通常は1週間~2週間程度ですべての手術を行います。すべての臓器を体内に戻したら、おなかの穴をふさぎます。穴が小さい場合は、自然に閉じるのを待つこともあります。
臍帯ヘルニアは、臍帯ヘルニア自体の状態や、奇形や染色体異常などの合併症の状態によって、重症度やその後の経過が大きく異なります。ただ、深刻な状態を除けば、手術後の経過も順調なことが多く、生存率も高い疾患です。
予防
原因がわかっていないため、特定の予防方法はありません。
医師紹介
東京慈恵会医科大学附属病院での勤務を経て、国立成育医療研究センターなどの小児医療専門の医療機関にて研磨を積む。現在は、実父が開業した高橋医院の院長を務め、練馬区内を中心とした保育園医や中学校医、企業産業医など、地域医療を担う。東京慈恵医科大学小児科学講座元非常勤講師。小児科専門医(日本小児科学会)、「子どもの心」相談医(日本小児科医会)、地域総合小児医療指導医(日本小児科医会)。専門分野は小児科一般、小児保健。