脂漏性皮膚炎の原因・症状・治療法と予防のポイントを解説
医師紹介
脂漏性皮膚炎とは
頭や鼻周りをはじめとした顔など、皮脂の分泌が活発な部分や、脇の下や胸などの皮脂腺が多い部分にできる湿疹です。かゆみをともなうこともあります。脂漏性湿疹とも呼ばれます。
原因
原因の詳細はまだわかっていませんが、真菌(カビ)の一種であるマラセチアが影響していると考えられています。マラセチアは人間の皮膚に存在する常在菌で、皮脂を栄養源としています。普段は無害ですが、なんらかをきっかけに異常に増殖すると皮膚の炎症につながると考えられています。さらに、マラセチアは栄養源として皮脂を分解する際に、皮膚に刺激を与える物質(遊離脂肪酸)を作りだします。このことも皮膚の炎症を引き起こす要因のひとつであると考えられています。
症状
新生児から生後3か月くらいまでの乳児にみられる「乳児型」と、思春期以降にみられる「成人型」があり、症状なども異なります。
乳児型
生後2週間~4週間ごろから症状があらわれはじめます。皮脂の分泌量が多い「頭」「おでこ」「眉毛」などに、黄色いかさぶた状の湿疹ができます。ほとんどの場合は、清潔にして保湿などの通常のケアを適切にしていれば、生後3か月ころまでに自然に治ります。
成人型
乳児型とは異なり、慢性化して治りにくくなることが多く、再発もしやすいという特徴があります。
湿疹部分は赤くなり(紅斑・こうはん)、白くかさついたフケのようなもの(鱗屑・りんせつ)がでます。このフケ状の鱗屑は、ひどくなるとかさぶたのように分厚く固まって、肌にこびりついた状態になることもあります。また、かゆみをともなうこともあります。湿疹ができやすいのは、皮脂の分泌が多かったり、肌がこすれやすかったりする以下のような部分です。
〇 脂漏性湿疹ができやすい部分
頭皮 / 髪の生え際 / 眉毛 / 鼻の周り / 耳の中・後ろ / 脇の下 / 胸 / 背中 など
検査・診断
一般的な診察で皮膚の症状から診断します。診断のための特別な検査はありませんが、脂漏性皮膚炎は、以下の皮膚疾患と症状が似ているため、これらの疾患である可能性も考えられる場合には、血液検査やパッチテスト、皮膚の一部を採取して感染を調べる検査などをすることがあります。
〇 症状が似ている皮膚疾患
- 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
- カンジダ症
- アトピー性皮膚炎
- 接触皮膚炎
など
治療・治療後の注意
まず基本となるのは、石鹸やシャンプーなどを使って頭や顔、身体を適切に洗い、皮膚の清潔を保つことです。シャンプーには、原因菌の増殖を防ぐ抗真菌薬を含むものもあるので、使用を検討するとよいでしょう。そのうえで、ステロイドや抗真菌薬などの塗り薬を使って治療をします。
乳児型は、薬を使わなくても自然に治ることが多いですが、成人型は自然には治りにくく慢性化することが多いため、皮膚科を受診して適切な治療を受けましょう。状態によっては、治療期間が数週間から数か月と長期になることもめずらしくありません。
予防
生活習慣が乱れていると肌の状態も悪くなり、皮膚の炎症などの肌トラブルが起こりやすくなります。そのため、食事や睡眠をはじめとした生活習慣を整えることで、肌の健康を維持しましょう。また、日ごろから皮膚を清潔な状態に保つことも予防につながります。
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医師紹介
1991年 大阪大学大学院医学研究科博士課程修了、博士号取得。1991年 箕面市立病院、1994年 関西労災病院皮膚科医長、2001年 国立大阪病院皮膚科部長、2004年 大阪警察病院皮膚科部長、2010年 はしろクリニックを開業。2008年-2011年 神戸女学院大学人間科学部非常勤講師。皮膚科専門医(日本皮膚科学会)、心身医療専門医(日本心身医学会)。専門分野は皮膚科心身症、アトピー性皮膚炎。