ヘルパンギーナ【医師監修】主な症状は高熱 喉の痛み 口内炎 大人にもうつる可能性

毎年5月頃から流行しはじめ7月頃にかけてピークとなり、秋や冬にはほとんどみられなくなります。
乳幼児がかかりやすく、患者全体の90%以上を5歳以下が占めます。感染力が強く、まれに大人でもかかることもあります。
医師紹介

目次
特徴的な症状は突然の高熱と口内炎にともなう喉の痛み

ヘルパンギーナの原因ウイルスに感染すると、数日の潜伏期間を経て、突然の高熱や内炎、口内炎にともなう喉の痛みなどの症状があらわれます。
〇 潜伏期間
2~4日
〇 主な症状
- 発熱
突然38度後半~40度台の高熱がでます。だいたい2~4日程度で解熱します。まれに熱性けいれんをともなうことがあります。
- 喉の炎症 / 口内炎
喉の奥、口蓋垂 / こうがいすい(のどちんこ)の周りが真っ赤になって、その周辺に口内炎(水ぶくれ状の発疹)ができたり、それが破れてただれたような状態(潰瘍)になります。
口内炎のほとんどは1~2mmほどですが、大きいものだと5mmほどになるものもあります。
喉の痛みはかなり強く、特に飲み込む動作をするときにしみたり痛みが強くなるため、食欲が落ちたり水分が十分に摂れずに脱水症状を起こすことがあります。この痛みは1週間前後で落ちつくことがほとんどです。
- そのほか
発熱にともなって倦怠感や頭痛の症状があらわれることがあります。
乳幼児の場合は、まだ自分で喉の痛みを訴えることができませんが、以下のような状態がみられる場合は痛みがある可能性があります。
〇 乳幼児の特徴的な状態
- 不機嫌
- よだれが垂れる(飲み込むと痛いため)
- 口の中に手を入れる
- 食欲不振
- 水分を摂らない
など
■ 参考サイト
国立感染症研究所 : ヘルパンギーナとは
大人もまれにかかる | 妊娠中の影響は少ない
一般的に大人は子供より免疫力が高いため、ヘルパンギーナにかかることはあまりありません。
しかし、疲れや体調不良、もともとの病気などで免疫力が低下している場合など、まれに大人でもかかることがあります。特に、ヘルパンギーナにかかった子どもの看病をしているときは感染するリスクも高くなるため、感染予防に気をつけましょう。
基本的な症状は子どもと同じですが、熱にともなう倦怠感や頭痛、関節痛がより強かったり発熱が長引くことがあります。
妊娠中の影響
妊娠初期から中期であれば、お腹の赤ちゃんへの影響は少ないとされています。妊娠後期、特に出産直前に感染した場合は、生まれた赤ちゃんが感染している可能性がありますが、ほとんどの場合は軽症だとされています。
合併症 - 熱性けいれんなど 急激な状態の変化には要注意
合併症としては、まれに熱性けいれんや無菌性髄膜炎、急性心筋炎を起こすことがあります。
熱性けいれん
熱性けいれんとは、生後6か月から5歳くらいまでの乳幼児が発熱した際に起こすけいれん発作のことです。通常、38度以上の発熱で急に熱が上がるタイミングで起こることが多いです。
〇 主な状態
突然意識がなくなり、白目を向いて身体や手を突っ張り硬直させたり、両手足をガクンガクンと震わせます。呼吸が不規則になったり、顔色が悪くなることもあります。
親が乳幼児期に熱性けいれんをしたことがある場合は、より起こしやすくなるので注意が必要です。
実際に目の前で熱性けいれんが起こると慌ててしまいますが、ほとんどの場合は5分以内で自然におさまり、発達などに影響を与える心配はないとされています。過度に心配せず、落ち着いて対応することが大切です。
事前に以下の適切な対応をシュミレーションして、いざというときに備えておくとよいでしょう。
〇 熱性けいれんへの対応
まずは、
1) 安全で平らな場所に寝かせる
2) 発作がはじまった時間を確認
3) けいれん止めの座薬が処方されている場合は使用する
次に、
4) 衣服をゆるめて楽にする
5) 嘔吐物が気管に入らないよう顔と全身を横に向ける
6) けいれんを観察する
呼びかけたり揺さぶったりせずに、静かにそっと見守りましょう。けいれん発作時には口に物を挟む必要はありません。
5~10分経つとほとんどの場合、けいれんは治まってきます。
けいれんが治まったら :
診療時間内であれば、落ち着いてかかりつけ医を受診しましょう。
休日や夜間などの診療時間外であれば、休日・夜間診療所や当番医、こども医療電話相談(#8000)などに、受診が必要かどうかを相談しましょう。
けいれんが治まらない ・意識が戻らない・呼吸が不安定 :
5~10分経過してもけいれんが治まる様子がなかったり、意識が戻らない、呼吸が不安定な場合は、日中、夜間・休日に関わらず救急車を呼びましょう。
そのほかにも、次の場合は日中、夜間・休日を問わず早急に医療機関を受診しましょう。
〇 早急に医療機関の受診が必要なケース
- けいれんを1日に2回以上起こす
- けいれんに左右差がある
- 手足の動きが悪い(麻痺)
- けいれんが治まった後もいつもと様子が違う
- 嘔吐や機嫌の悪さなど他の症状がひどい
- 生後6か月未満の乳児
- はじめてのけいれん
など
無菌性髄膜炎
脳を包む髄膜にウイルスが感染して炎症を起こします。ヘルパンギーナの症状である発熱と喉の痛みに加えて、頭痛や嘔吐などの症状が出たり、首の後ろが痛むこともあります。
急性心筋炎
ウイルスが心臓の筋肉にまでおよび炎症を起こします。急性心筋炎を起こすと、急激に悪化し、ごくまれではありますが命にかかわることがあります。
以下のような状態がみられた場合は急性心筋の可能性があるため、日中、夜間・休日を問わず早急に医療機関を受診しましょう。
〇 早急に医療機関の受診が必要な症状
- 急にぐったりする
- 顔色が悪い
(青白い、土気色、唇の周りが青白い など) - 呼吸が不安定
(浅く速い、不規則、息切れ など) - 胸の痛み
- いつもと様子が違う
など
強い感染力!感染経路は「飛沫感染」「糞口感染」「接触感染」

感染経路は、飛沫感染、糞口感染、接触感染が中心です。感染力が強く、保育園や幼稚園などでは集団で流行することがあります。
最も感染力が強いのは、急に高熱がでるなど症状があらわれる初期の頃です。この頃は特にほかの人にうつしやすいので、手洗いや咳エチケットなどの感染予防をしましょう。
また、回復したあとも2~4週間ほどは便からウイルスが排出されることがあります。そのため、特に乳幼児のおむつ替えには注意をして、処理のあとにはていねいに手を洗いましょう。
接触感染 :
手指やもの、食品などについたウイルスが主に口や目、鼻などの粘膜から体内に入ることで感染します。
糞口感染:
便の中に排泄されたウイルスが手指などを介して主に口や目、鼻などの粘膜から体内に入ることで感染します。
飛沫感染 :
感染している人の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸いこむことで感染します。
何度でもかかることがある
ヘルパンギーナの原因となるウイルスは1種類ではありません。そのため、一度ヘルパンギーナにかかっても、別の種類のウイルスが原因となって、再びヘルパンギーナになることがあります。
ヘルパンギーナの原因ウイルスは、主にコクサッキーウイルスA群の内の7種類ほどで、ほかにもコクサッキーB群、エコーウイルスなどがあります。
検査をすることはまれ 症状から診断

ヘルパンギーナは、一般的な診察や症状、周辺の流行情報などから総合的に診断します。
〇 主な診断基準
- 発熱
- 喉の痛み
- 喉の痛みにともなう症状
(よだれが多い、食欲不振など) - 喉の奥の口内炎 / 炎症
- 周囲のヘルパンギーナの流行状況
など
確実な診断方法には、主に便や髄液を使ったウイルス検査と血液検査の2つがありますが、順調に回復することがほとんどのため、検査はせずに診断をすることがほとんどです。
治療 - 基本は対症療法
ヘルパンギーナに対する特別な治療や薬はなく、症状を和らげる対症療法が中心となります。経過は順調に回復することがほとんどです。
発熱や頭痛に対してアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を用いたり、脱水症状がある場合には点滴で水分補給をすることがあります。
水分補給や刺激の少ない食事で脱水症状に注意
飲食時の痛みで十分な水分が摂れずに脱水症状を起こし、医療機関で点滴治療を受けることもあります。脱水症状を起こさないように、こまめに水分補給をすることを心がけましょう。
オレンジジュースなどの酸味がある飲み物は、しみたり強く痛んだりすることがあるので、避けたほうがよいでしょう。ぬるめのミルク・牛乳は、比較的痛みが少なく飲みやすいことがあります。
水分が摂れず、以下のような状態がある場合は、脱水症状を起こしている可能性があるので、医療機関を受診しましょう。
〇 脱水症状が疑われる状態
- おしっこの量や回数が減る
- 唇や口の中が乾いている
- 泣いても涙が出ない
など
また、食べ物も、味が濃い(特に刺激物や塩味、酸味が強い)ものや固いものは、しみたり痛みを強く感じることがあります。柔らかい、喉ごしがよいなど、消化がよくて食べやすいものを摂るのがよいでしょう。
保育園・幼稚園・学校への登園・登校の目安
ヘルパンギーナは、特に明確な登園・登校停止期間は設けられていない「その他の感染症」にあたります。
もちろん発熱している期間は休む必要がありますが、解熱して数日たち体力や食欲が回復したら登園・登校して問題ありません。感染した本人の症状に合わせて判断をしましょう。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、ヘルパンギーナの登園の目安は以下のように記載されています。
〇 発熱やのどの痛み、下痢がみられる場合や食べ物が食べられない場合には登園を控えてもらい、本人の全身状態が安定してから登園を再開してもらう。
引用) 厚生労働省 : 保育所における感染症対策ガイドライン
文部科学省の「学校において予防すべき感染症の解説」では、登園・登校の目安は以下のように記載されています。
〇 全身状態が安定している場合は登校(園)可能であるが、長期間、便からウイルスが排出されるので、手洗い(特に排便後、排せつ物の後始末後)の励行が重要。
また、ヘルパンギーナのような「その他の感染症」は、流行状況などによっては第三種の感染症として扱われることがあります。第三種の感染症になると、学校保健安全法での登園・登校の目安は以下のように定められています。
〇 病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで
引用) 学校保健安全法施行規則
お風呂やプールに入ってもいい?
ヘルパンギーナは、高熱と食欲不振の症状が強いため体力を消耗します。そのため、お風呂やプールでさらに体力が消耗してしまわないよう、感染した本人の症状や状態に合わせて判断しましょう。
お風呂
体力を消耗するので、高熱がでているうちは入浴を避け、タオルで体を拭く程度にするのがよいでしょう。
熱がある程度下がり元気がでてきたら、疲れない程度にぬるめのお湯で短時間の入浴やシャワー浴をすることは問題ありません。
プール
発熱中のプールは控えます。体力の消耗などによる万が一の事故を防ぐためにも、完全に熱が下がり食欲もある程度でてきて、いつものように元気に過ごせるようになってからにしましょう。
予防 - ていねいな手洗いや咳エチケット

ヘルパンギーナには、予防接種や特別な予防薬はありません。
さらに、ヘルパンギーナの原因ウイルスはアルコールや熱に抵抗力が高く、アルコール消毒はあまり効果がありません。感染を予防するためには、普段の手洗いや咳エチケットが有効です。
周囲で流行しているときは、感染者はもちろんですが、感染者の家族など身近な人もよく手を洗うようにしましょう。
回復したあとも2~4週間ほどは便からウイルスが排出されることがあります。乳幼児のおむつ替えには注意をして、処理のあとには特にていねいに手を洗いましょう。
また、唾液などの分泌物がつきやすいタオルや食器などの共有は避けましょう。
三大夏風邪「ヘルパンギーナ」「手足口病」「プール熱」症状の違い

「ヘルパンギーナ」「手足口病」「プール熱」は三大夏風邪とされています。症状の中にも似たようなものがあり、特に「ヘルパンギーナ」と「手足口病」はより症状が似ています。
手足口病
主に5歳以下の乳幼児がかかるウイルス性の感染症で、手のひらや足の甲や裏、口の中などに2~3mm程度の水ぶくれ状の発疹(水疱性発疹)ができます。同じく夏季に流行します。
手足口病の場合は、発熱をともなうことがありますが、38度後半~40度台の高熱がでるヘルパンギーナとは異なり、熱がでない、でても微熱(38℃以下)であることがほとんどです。
発疹も、喉の奥にだけできるヘルパンギーナとは異なり、唇や頬内側の粘膜など口の中全体にできるほか、手のひらや足の甲や裏など身体にもできることが特徴です。
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プール熱(咽頭結膜熱)
主に5歳以下の乳幼児がかかるウイルス性の感染症で、強い喉の痛みや結膜炎、数日持続する高熱が特徴的な症状です。夏季に流行することが多いですが、季節を問わず感染がみられます。
プール熱はヘルパンギーナとは異なり、結膜炎などの目の症状があります。
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そのほかヘルパンギーナと似ている疾患
「手足口病」「プール熱」以外にもヘルパンギーナと似た疾患に、以下のようなものがあります。
アフタ性口内炎
一般的に、いわゆる口内炎と呼ばれているものです。発熱をともなわず、頬や唇の内側、舌、歯茎などにできます。
単純ヘルペス1型による歯肉口内炎
1~5歳くらいの乳幼児によくみられ、単純ヘルペスウイルス1型に初めて感染した場合に起こることがほとんどです。
高熱に続いて歯肉(歯茎)の腫れ、口の中の粘膜や舌、唇などに水ぶくれ状の発疹(水疱)の症状がでます。ヘルパンギーナとよく似た症状もありますが、歯肉(歯茎)を含む口の中全体や口の周りにも症状がでることがあるのが特徴です。
まれにヘルペス脳炎を起こすことがあります。高熱が2~4日程度経ってもなかなか下がらない場合は、再度、医療機関を受診しましょう。
また、以下のような脳炎の特徴的な症状がある場合は、日中、夜間・休日を問わず早急に医療機関を受診しましょう。
〇 早急に医療機関の受診が必要な症状
- ぐったりしている
- 意識がもうろうとしている
- けいれんを起こす
など