ロタウイルス感染症 | 主な症状は嘔吐・下痢 【医師監修】 予防接種で重症化を防ぎましょう

特に生後6か月から2歳頃までの子どもが感染しやすく、頻回な下痢や嘔吐のため脱水症状起こして入院が必要になるケースも少なくありません。
非常に感染力が強いウイルスのため、完全に感染を予防することはできず、保育園などで大流行しやすいのも特徴です。
毎年2月から5月あたりに流行がみられますが、1年を通して感染する危険があります。
医師紹介

目次
主な症状は嘔吐・下痢・発熱 - 脱水症状が起こると危険!
ロタウイルス感染症は、ロタウイルスに感染することで下痢や嘔吐などの胃腸炎症状と発熱を引き起こします。
初期症状としては嘔吐と発熱が見られることが多く、2日目以降は下痢の症状もあらわれるようになります。
〇 潜伏期間
2~4日
〇 主な症状
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- 腹痛
下痢
水様便(水のようなシャーっと出る下痢便)が多く、血便はまず起こりません。3日から長くて1週間ほど続くこともあり、回数は数回から数十回に及びます。
ほかのウイルス感染による胃腸炎よりも重症化することが多く、脱水症状が起こると生死に関わる危険もあり、慎重に経過をみていくことが大切です。
以前は特徴的と言われていた白色便ですが、実際には目立たないことも多く、これでロタウイルス感染症かどうかを判断することは困難です。
こんな症状があったらすぐ受診!乳幼児は要注意!
特に注意が必要なのは、母体からの免疫がなくなる生後半年ほどの乳児から、免疫力が未熟な2歳頃までの幼児です。
この頃の乳幼児は、身体が小さく、消化管の機能も未熟なため、頻回の嘔吐・下痢や高熱を生じると、瞬く間に脱水症状を引き起こすことがあります。
以下のような症状は、脱水症状を起こしているサインです。このような症状がみられた場合は、休日・夜間関係なく救急外来を受診するようにしましょう。
〇 脱水症状のサイン
- 元気がなくぐったりしている
- 唇や舌が乾いている
- 目が落ちくぼんでいる
- 大泉門がへこんでいる(乳児の場合)
- 尿がでない / 少ない
- 尿の色が濃い
検査 - 迅速診断キットも

頻回の嘔吐や下痢、発熱などの症状があらわれて医療機関を受診した際には、一般的に次のような検査が行われることがあります。
ただし、原因となるウイルスで治療内容が変わることはないため、ウイルスの特定検査はせずに治療を進めることも多くあります。
〇 主な検査
- 血液検査
- 腹部レントゲン検査
- 検便
- 迅速診断キット
迅速診断キット
年齢・流行の状況などからロタウイルス感染症の可能性が考えられる場合には、迅速診断キットが使用されます。
検査方法は、綿棒のようなものを肛門に挿入して少量の便を採取し、便中にロタウイルスがいるかを調べます。
結果が出るまでの所要時間は5~10分程度で、素早く診断することが可能です。
ロタウイルスの検査に使われる迅速診断キットは、種類によっては、同じく胃腸炎を引き起こすノロウイルスやアデノウイルスを同時に調べることができます。
治療は対処療法 - 症状の改善と脱水予防
ロタウイルスに対する薬はないため、特別な治療方法はありません。
下痢に対する整腸剤、発熱に対する解熱剤、脱水に対する点滴など、つらい症状を和らげる対症療法となります。
ただし、下痢止めはウイルスの排出を妨げ、回復を遅らせることがあるため、原則として使用はしません。
通常は1~2週間ほどで自然に治ります。
脱水症状
ロタウイルス感染症でもっとも注意すべきは脱水症状です。脱水の症状が酷くなると、入院治療が必要になったり、生死にかかわる危険もあるため、症状にあわせて十分な水分摂取をすることが大切です。
嘔吐の症状が落ち着いている場合 :
下痢などで排出される量よりも多い水分量を、少量ずつこまめに摂取をしましょう。
嘔吐の症状がある場合 :
1時間ほどは飲食を控え、嘔吐の症状が落ち着いてから少量ずつ様子をみながら水分を摂取しましょう。
摂取する水分には以下のような飲み物がお勧めです。
〇 水分摂取に適した飲み物
経口補水液 / 2倍に薄めたりんごジュース / スポーツドリンク
5歳以下の子どもが胃腸炎で入院するケースの半数以上はロタウイルス感染症が原因です。さらにそのほとんどは頻回な下痢や嘔吐、高熱による脱水症状によるものです。
以下のような場合は入院治療が勧められます。
〇 入院治療が勧められる例
- 血液検査の結果で脱水症状が確認できる
- 身体の状態に脱水症状のサインがある
- 下痢や嘔吐の回数が多い
- 高熱が3日以上続く
- そのほか脱水症状を起こす可能性が高い症状がみられる
など
入院治療では、点滴による脱水症状の改善を図る治療が行われるほか、整腸剤や解熱剤などによる薬物療法も併用して行われます。
入院期間は症状にもよりますが、1週間前後になることが多く、症状が続いている場合はさらに長くなる可能性もあります。
学校・幼稚園・保育園への登校・登園の目安
ロタウイルス感染症は特に明確な出席停止期間は設けられていませんが、流行状況などによっては第三種の感染症として扱われることがあります。
学校保健安全法では、第三種の感染症の登校・登園の目安を以下のように定めています。
〇 病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
引用) 学校保健安全法施行規則
そのほかでは、登園・登校の目安として以下のように記載されています。
〇 嘔吐・下痢等の症状が治まり、普段の食事ができること
〇 下痢、嘔吐症状が軽減した後、全身状態の良い者は登校(園)可能だが、回復者であっても 排便後の始末、手洗いの励行は重要である。
また、症状がおさまっても1か月ほどは便の中にウイルスの排出が続くので、適切な感染対策を行って、感染を拡げないようにしましょう。
感染経路は「接触感染」「糞口感染」

ロタウイルスは感染力が非常に強く接触感染や糞口感染によって感染が拡がります。
接触感染や糞口感染の特徴は以下の通りです。
- 接触感染:
- 手指やもの、食品などについたウイルスが主に口・鼻から体内に入ることで感染します。
- 糞口感染:
- 便の中に排泄されたウイルスが手指などを介して口から体内に入ることで感染します。
何度でもかかる!大人もかかります!
ロタウイルスの初感染は、活動範囲や外出する機会が増えたり、集団保育がはじまる生後半年から2歳頃までが多いとされ、5歳までにはほぼ全ての子どもが感染するとされています。
一度感染すると身体の中で免疫がつくられますが、 これはロタウイルスにまったくかからなくなるというものではなく、免疫を獲得した後も何度でもかかる可能性があります。
そのため、もちろん大人が感染することもあります。特に、感染した子どもと接すると30~50%の大人は感染するとされています。
しかし、繰り返しロタウイルスに感染することで、軽い症状でおさまったり症状自体があらわれなくなります。
■参考サイト :
国立感染症研究所ホームページ 「ロタウイルス感染性胃腸炎とは」
予防接種は2種類 - 重症化を防ぐために接種を!

ロタウイルスにはワクチンがあり、予防接種を受けることができます。
2020年10月1日からは定期接種となり、費用を負担することなく接種できるようになりました ( 対象となるのは2020年8月1日生まれ以降 ) 。
現在、ロタウイルスワクチンにはロタリックスとロタテックの2種類があります。
どちらも飲むタイプの生ワクチンですが、接種する回数などに違いがあります。
ロタリックス (1価)
重症化しやすいロタウイルス1種類を弱毒化したワクチンです。
〇 接種回数
2回
〇 接種量
1回1.5ml
〇 接種期間
生後6週から24週までの間
1回目と2回目の間は4週間以上あける必要があります。また、生後24週以降は接種することができないため、1回目は生後15週以前に接種することが推奨されています。
ロタテック (5価)
流行しやすく かつ 重症化しやすい5つのタイプのロタウイルスを弱毒化したワクチンです。
〇 接種回数
3回
〇 接種量
1回2ml
〇 接種期間
生後6週から生後32週までの間
こちらもロタリックス同様、各回の間は4週間以上あける必要があります。
どちらのワクチンも、感染を100%防ぐものではありませんが、入院や点滴が必要になるような重症例に関しては9割以上防ぐことができます。
さらに、ワクチンの有効期間に関しては明確なデータはありませんが、低月齢のうちにワクチンを接種しておけば、少なくとも脱水症状になりやすい生後6か月~2歳頃までは免疫が維持されると考えられています。
このように、抵抗力が不十分で重症化しやすい2歳以下の乳幼児には有効な予防接種です。
■参考サイト :
厚生労働省 「ロタウイルスワクチン作業班中間報告書」
副反応
ロタウイルスのワクチンは、極まれに腸重積という非常に重篤な副反応を引き起こすことが知られています。
腸重積とは、腸の一部が後側の腸に引き込まれて重なり合ってしまう病気のことで、周期的な腹痛、嘔吐、不機嫌、下痢、血便などの症状を引き起こします。
腸が重なった部分は血流が悪くなりやすく、重症な場合には腸が壊死してしまうこともあります。
ロタウイルスのワクチンは接種できる期間が厳密に定められています。それは、腸重積は生後6か月くらいから2歳頃までの乳幼児がかかりやすく、腸重積になりにくい低月齢の内に接種を完了する必要があるためです。
腸重積の副作用は、ワクチン接種後31日間は発生の頻度が増えるとされていますが、7日以内に起こることがほとんどです。
この期間に嘔吐や下痢、血便の症状など、いつもと違う様子がみられた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
感染の予防対策 - キーワードは手洗いと消毒!

ロタウイルスは感染力が非常に強いため、完全に予防するのは困難ですが、感染を広げないために、次のような対策を行いましょう
〇 予防対策
- 手洗い
- 使い捨て手袋の使用
- マスクの着用
- 触れた物・場所の消毒
手洗い
ロタウイルスの感染経路である接触感染や糞口感染は、手や指に付着したウイルスが口や鼻を通して体内に入り込むことで感染します。
ウイルスの侵入を防ぐために、感染者に接した時や外出先から帰った時は、こまめに手洗いをしましょう。
マスクの着用
ロタウイルス感染症が流行しているときや、家族内など身近に感染者がいる場合はマスクの着用が効果的です。
また、感染者のオムツ交換や嘔吐・下痢などの汚物処理の際にも、空気中にロタウイルスが飛散するため、マスクを着用しましょう。
以下の点に注意するとより効果的です。
〇 マスクを着用する際の注意点
- 鼻まで覆うように着用する
- 同じマスクを長時間使用しない
- 感染者に近づいた場合はこまめに交換する
- マスクの表側はなるべく触らない (ウイルスが付着している可能性があるため)
使い捨て手袋の使用
感染者のオムツ交換や嘔吐・下痢などの汚物処理の際には、空気中にロタウイルスが飛散したり、手指にウイルスが付着する可能性があるため、マスクと合わせて使い捨て手袋を着用しましょう。
もちろん、使用した後は表面に触れず速やかに処分することが大切です。
触れた物・場所の消毒
流行時期や家族内など身近に感染者がいる場合には、ドアノブや電気スイッチ、トイレレバーなど手の触れやすい物品をこまめに消毒すると感染予防に効果的です。
また、乳幼児が感染した場合は、唾液などが付着したおもちゃなどもこまめな消毒が必要です。
消毒は、ハイターなどの次亜塩素酸を薄めたものでこまめに消毒するようにしましょう。
布製のものは、ハイターに浸け置きしてから洗濯するのがおすすめです。
アルコール消毒はあまり効果がありません。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液の作り方
家族や身近な人が感染した際は、手すり、ドアノブ、おもちゃ、その他日用品など、よく触れるところを消毒しましょう。
消毒液としては、濃度200ppm(0.02%)の塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液が適しています。アルコール消毒はあまり効果がありません。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液は金属を腐食させる作用があるため、金属部分に使用する場合は、10分程あとに水拭きで十分にふき取りをしてください。
また、布類に使用する場合も、色落ちや生地を傷めることがあるため、注意して使用しましょう。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液は、家庭用の塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)を以下の例のように水で薄めることで簡単につくることができます。
〇 塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液の作り方
例)
濃度200ppm(0.02%)の塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液 :
・ 1Lの水に対して家庭用塩素系漂白剤4ml
※家庭用塩素系漂白剤の濃度は約50000ppm(約5%)です