子供のインフルエンザ|子供の病気【医師監修】
医師紹介
目次
インフルエンザと風邪の違い
インフルエンザと風邪とは、原因となるウイルスの種類が異なり、通常の風邪はのどや鼻に症状が現れるのに対し、インフルエンザは急に38~40度の高熱がでるのが特徴です。
さらに、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの全身症状も強く、これらの激しい症状は通常5日間ほど続きます。
また、気管支炎や肺炎を併発しやすく、重症化すると脳炎や心不全を起こすこともあり、体力のない高齢者や乳幼児などは命にかかわることもあります。
インフルエンザの感染様式
通常の風邪 のウイルスの感染様式は、特に手から手による接触感染の頻度が高いといわれています。
それに対して、インフルエンザウイルスは患者のくしゃみや咳、痰などで吐き出される微粒子(飛沫) を介して感染する「飛沫感染」が中心です。
インフルエンザの型と流行について
インフルエンザには、毎年冬場に流行する「季節性インフルエンザ」と、ほとんどの人が免疫を獲得していない、突然変異したインフルエンザウイルスに感染することで起こる「新型インフルエンザ」があります。
インフルエンザウイルスの「型」はA型、B型、C型の3つに大きく分けて分類され、大きな流行の主体になるのはA型とB型です。毎年流行を繰り返すごとに変異株がでています。ウイルスの感染力や症状の強さは、それぞれ「型」によって異なります。 特にA型は多くの変異株があり、世界的な大流行を引き起こします。
日本ではインフルエンザは12~3月に流行します。これは、温度が低く乾燥した冬には、空気中に漂っているウイルスが長生きできるからです。 また、乾燥した冷たい空気で私たちののどや鼻の粘膜が弱っています。年末年始の人の移動で ウイルスが全国的に広がるのもひとつの原因だと言われており、これらの原因が重なって流行しやすい時期となっています。
こどもがインフルエンザかなと思ったら、まず医療機関へ
こどもは一般的に、大人より体力も少なく、抵抗力も弱いので、インフルエンザをこじらせてしまうことがあります。インフルエンザが疑われる時には、まず医療機関を受診して治療しましょう。その際、感染の拡大を防ぐために、必ず電話で問い合わせてから受診しましょう。
では、どのような症状がみられた時に、医療機関を受診したらよいのでしょうか。
特徴的な主な症状は・・・
- 38℃以上の高熱
- 頭痛
- 筋肉痛(手足の痛みを訴えたり、歩けなくなるなど)
- 鼻汁・喉の痛み・咳など
- これらの症状が急激に現れる
※軽症や、やや異なった症状をみせる場合もあります。具合が悪い時には、早めに医師に相談しましょう。
インフルエンザの治療
インフルエンザに対する治療薬としては、下記の抗インフルエンザウイルス薬があります。
- オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)
- ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)
- アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル等)
- ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ)
- ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル)
インフルエンザの症状が出て、1-2日で薬を飲み始めれば、 丸1日ぐらいで、発熱や倦怠感も、だいぶ楽になることが多いですが、 副作用がでることがありますので、服用にあたっては、医師からよく説明を受けてください。
抗インフルエンザ薬の副作用
抗インフルエンザ薬の副作用の疑いとして、意識障害、異常行動、幻覚などの精神・神経症状が報告されています。疑わしい症状が見られた場合、服用を中止し、医師の診察を受けましょう。インフルエンザそのものが同様の症状を起こすことのある疾患であり、症状だけで区別することは難しい場合があります。
どんな薬を使うにしろ、インフルエンザにかかった時は、こどもの様子や行動をしっかりと見守っておくことが大切です。
怖い合併症「インフルエンザ脳症」
最近、日本では小児のインフルエンザ脳症が深刻な問題になっています。
流行によって異なりますが、幼児を中心として、毎年約100~500人の発症、その10~30%が死亡、そしてほぼ同数の後遺症患者が出ていると推測されています。原因は不明ですが、インフルエンザウイルスの感染が発症の引き金となり、突然の高熱に始まって、 1~2日以内に昏睡などのさまざまな程度の意識障害をおこし、短期間の内に全身状態が悪化し、死に至ることがあります。
自己判断で解熱剤の投与は危険!!
100人を越える発症は日本にしか見られないことから、原因は何であるのか追求されていますが、よくわかっていません。メフェナム酸やジクロフェナクという解熱剤が関係しているのでは?とも考えられています。一般的には、アセトアミノフェンが、安全性が高いといわれていますが、自己判断での薬の投与は厳禁です。
子供のインフルエンザ脳症は前兆を見逃さず、早く医療機関を受診することが大切
インフルエンザ脳症が疑われる初期症状
① 意識障害
眠ったようになり、呼びかけや痛みにも反応しない(軽い場合はボーっとしたり、ウトウトしたりする程度のことも)。
② けいれん
筋肉のこわばりやガクガクとした動き。1分程度のものから20分以上続くものも。
③ 異常言動
幻覚を訴えたり、意味不明の言葉を話したりする。
異常言動の例
① 人を正しく認識できない(両親が分からない、いない人を「いる」と言う)
② 食べ物と食べ物でないものを区別できない(自分の手をかむ、何でも口に入れてしまう)
③ 幻視・幻覚を訴える(例えば、アニメのキャラクターやライオンが見えるという)
④ 意味不明な言葉を話す、ろれつが回らない
⑤ 理由もなくおびえる、恐怖を訴える
⑥ 急に怒り出す、泣き叫ぶ、ニヤリと笑う、大声で歌い出すなど
(注)厚労省研究班「インフルエンザ脳症ガイドライン」を参考に作成
インフルエンザの予防
ワクチンを受けることが重要ですが、次のような生活習慣も効果があります。
1. 手洗いとうがいの習慣をつける。
外出から帰った後や食事の前など頻繁に手をあらうことが重要です。石けんと流水で20秒以上洗いましょう。うがいはのどの乾燥を和らげます。
2. 適度な湿度を心がける
ウィルスは乾燥した空気中で長生きします。加湿器などを利用して適度な湿度を心がけましょう。
3. 流行期には人混みを避け、目、鼻、口を手で触らない。
ウイルスは手についていることがあり、目、鼻、口の粘膜から感染します。
集団生活に戻る前に・・・
最低でも5日以上の安静が必要です。解熱後48時間を経過しないと感染力が残っています。感染の拡大を防ぐために、集団生活に戻る前に診察を受けましょう。
※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。
東京内科医会は、常に最新の医学知識を学び、最良の医療を実践する魅力を持った何かを主体に、診療を行っている医師の集まりです。