休日の寝だめは逆効果!?「睡眠負債」の原因と対策を睡眠のプロが解説

放置すると、日々のパフォーマンス低下だけでなく、生活習慣病やメンタル不調のリスクにもつながると言われている睡眠負債の仕組みやリスク、セルフチェック方法、対策について、一般社団法人オルソスリープアカデミー代表理事でアスリートスリープコーチとしても活動する矢野達人氏に解説してもらいます。
目次
学生時代はスポーツトレーナーを目指して専門学校に通っていたが、 トレーナーとして食べていくことの難しさを痛感し挫折。 その後は、ほぐしや癒しを提供するリラクゼーションの仕事に就き 「休息」の大切さや価値を知る。 その中で「真の休息とは何か」を追及していった結果 「睡眠の質」が重要であると行き着き、 睡眠の専門知識を学び始める。 睡眠クリニックや寝具メーカーの運営にも携わるなど 睡眠分野での活動の幅を広げていき、 現在は学生時代の夢でもあった 「スポーツトレーナー」と「睡眠」を掛け合わせて アスリートスリープコーチとして活動している。
借金のように蓄積した睡眠不足=睡眠負債
「睡眠負債」とはひとことで言えば、毎日少しずつ足りていない睡眠が「借金」のように体と脳にたまっていく状態のことです。
たとえば、本来7時間の睡眠が必要な人が、平日に6時間しか寝ていないとします。そうすると1日で1時間が不足し、5日間で合計5時間の睡眠不足=負債が生じるという計算になります。
睡眠負債がなぜ問題なのかというと、ただ「眠い」だけで終わらないからです。
短期的な影響としては、通常の睡眠不足と同様に「集中力・判断力の低下」「ミスや事故が増える」「イライラしやすくなる」などを引き起こします。
しかし、睡眠負債は一時的なものではなく蓄積するため、中長期的な影響も現れます。具体的には「自律神経の乱れ」「免疫力低下」「生活習慣病(高血圧・糖尿病など)のリスク上昇」「うつ症状やメンタル不調」などのリスクにもなり得るのです。
とくに睡眠負債がたまりやすい人の特徴としては、「平日と休日で寝る時間が大きく違う」「寝だめで帳消しにできると思っている」「ほぼ寝落ちするまでスマホを見てしまう」「仕事などを優先し、寝るのを後回しにする人」などが挙げられます。
睡眠負債を抱えているかどうか、判断するには?
必要な睡眠時間には個人差があるため、単純に「何時間寝ているか」だけでは睡眠負債があるかどうかを正確には判断しにくいです。「自覚症状」と「睡眠リズム」に問題ないかを見ることをおすすめします。
具体的には、以下の項目のいずれかに当てはまる人は睡眠負債を抱えている可能性があります。
- 朝、目覚ましがないと起きられない
- 起きてから30分以上ぼーっとする
- 日中、強い眠気や集中力低下がある
- 休日は平日より2時間以上長く寝てしまう
- 仕事・家事中にミスが増えたと感じる
- 些細なことでイライラする
- ちゃんと寝ているのに疲れが取れない感覚がある
とくに、平日と休日で起床時間が2時間以上ずれる人は睡眠が大きく足りていない可能性が高いです。
睡眠負債を「一気に返す」と睡眠の質低下につながる可能性も
大事なポイントは睡眠負債を「一気に返す」より「これ以上増やさない」ことを最優先にして過ごすことです。
睡眠負債は休日の寝だめでは返せません。日々少しずつ睡眠時間を長く確保することでカバーしていくのが正しい方法です。これを間違えて「よし睡眠負債を一気に返すぞ」と考えて休日に長く寝ると、体内時計が乱れて睡眠の質を大きく低下させる原因になります。
「毎日の睡眠時間を15分だけ増やす」
「就寝・起床時刻をなるべく固定して体内時計を整える」
「休日の寝だめは長くても+1時間までにする」
などを心掛けるだけでも、睡眠負債は返済に向かって進むはずです。難しいことは考えず、シンプルに「今までよりも少しでもいいから平均睡眠時間を延ばす」と考えてもらうことが健康的な取り組みだと思います。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。
