突発性難聴の原因・症状・治療法と予防のポイントを解説
医師紹介
突発性難聴とは
突然、なんの前触れもなく、耳が聞こえづらくなる疾患です。まれに、両方の耳に起こることがありますが、ほとんどの場合は左右どちらか一方の耳に起こります。
原因
耳の中は、外側から順に外耳、中耳、内耳に分けられます。このうち、中耳と内耳は鼓膜より奥に位置し、内耳は耳の中の最も奥の部分にあたります。この内耳には、音を感知して脳に情報を伝達する役割をもつ有毛細胞があります。突発性難聴は、この有毛細胞が正常に機能しなくなることで起こります。
有毛細胞が正常に機能しなくなる明確な原因はわかっていませんが、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などの生活習慣に関わることが要因となり、血流障害やウイルス感染、免疫異常などが起こることで引き起こされると考えられています。
症状
症状は突発的で、前触れなくあらわれます。主な症状には以下のようなものがあります。
〇 主な症状
- 難聴(聴力の低下)
- 耳閉感(耳がつまった感じ)
- 耳鳴り
- めまい
- 吐き気
など
難聴は、ほとんどの場合、左右どちらか一方の耳に起こります。まれに両耳で起こることもあります。聞こえの程度は、耳の閉塞感のみの場合や、高音のみが聞こえない場合、まったく聞こえない場合など、さまざまですが、日常会話が聞き取れない(高度難聴)程度から発症することが多いです。
また、耳の聞こえ以外のめまいや吐き気などの症状は、発症時に一時的にともなうのみで、長期的に継続したり、繰り返したりすることはありません。
検査・診断
問診で、症状や直近で難聴を起こすようなできごと(外傷や薬の使用など)の有無などの確認、耳の中の状態を確認する視診、聴力検査などを行います。また、聞こえに関連する神経や有毛細胞のある内耳部分を確認するために、MRI検査などの画像検査や、血液検査などが行われることもあります。
治療・治療後の注意
発症後すぐに治療を行ったほうが完治する可能性が高く、発症してから2週間を過ぎると治療を行っても治りにくくなります。そのため、突発性難聴が疑われる症状がある場合には、早めに医療機関を受診して、適切な治療を受けることが推奨されます。
治療の中心は、有毛細胞を回復させるために内耳の血流をよくしたり、ウイルス感染による炎症を抑えたりする飲み薬や点滴薬を使用する薬物治療です。
これらの治療で症状の改善がみられない場合や、糖尿病などの持病や体質などが理由で飲み薬や点適役が使用できない場合は、鼓膜の内側に、直接、ステロイドの注射薬を注入する治療(ステロイド鼓室内注入療法)を行います。さらに追加的な治療として、高圧の酸素を吸入することで、内耳の血流を促す治療(高圧酸素療法)が行われることがあります。
また、突発性難聴は、生活習慣と深く関わっていると考えられているため、生活習慣を整え、耳に負担のかからない静かな環境で、心身ともに十分な休息をとって過ごすことが推奨されます。
予防
直接的な原因がわかっていないため、特定の予防方法はありません。しかし、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などの生活習慣と深く関わっていると考えられているため、睡眠や休息を十分にとるなど、できるだけ生活習慣を整えて過ごすのがよいでしょう。
また、糖尿病のほかにも、高血圧や自己免疫疾患などの基礎疾患は、血流障害や免疫異常を引き起こすことから、突発性難聴を発症するリスクとなります。そのため、基礎疾患がある場合は、適切な治療を受け、よりよい状態にコントロールすることが推奨されます。
医師紹介
1978年 関西医科大学耳鼻いんこう科入局。1982年 テネシー大学留学、1985年 関西医科大学大学院卒業、1986年 関西医科大学耳鼻咽喉科講師、1987年 医療法人いしべ耳鼻咽喉科を開業。耳鼻咽喉科専門医(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)、気管食道科専門医(日本気管食道科学会)。専門分野はアレルギー性鼻炎、中耳炎、耳鼻いんこう科一般。