声帯ポリープの原因・症状・治療法と予防のポイントを解説
医師紹介
声帯ポリープとは
声帯は、のどぼとけの裏に位置する声を出す器官です。声帯ポリープは、この声帯部分に炎症が起こり、声帯粘膜にこぶのようなできもの(ポリープ)ができる疾患です。歌手や教師などといった、ふだんから大きな声を出すなど、声をよく使う人がかかりやすい疾患です。
原因
声の出しすぎや喫煙、ウイルス感染(風邪など)などによって、声帯に炎症が起こることが原因となります。声帯の炎症が慢性化すると、やがて血種(血豆のような状態)になります。血種は、声帯を安静にしていれば自然になくなりますが、そのまま負荷がかかり続けると、粘膜の下で固まり、ポリープへと悪化していきます。
症状
主な症状には、以下のようなものがあります。
〇 主な症状
- 声のかれ
- 声のかすれ
- 声が出しにくい
- 発声時の疲れ
- のどの違和感
- のどの痛み
など
検査・診断
鼻から内視鏡(ファイバースコープ)を挿入し、声帯を含めたのどの状態やポリープの有無を確認します。また、声のかすれなど、声帯ポリープと同じ症状のある疾患との見分けや、手術の対象かを検討するためには、声帯の動きを観察する検査(喉頭ストロボスコピー)や、声の状態を確認する検査(発声機能検査)などが行われます。
ポリープが悪性腫瘍の疑いがある場合は、細胞や組織の一部を採取して生体検査が行われることもあります。
治療・治療後の注意
自然に治ることもありますが、まずは声帯を安静に保つことです。具体的には、大きな声を出すことを控え、のどの乾燥を避けます。そのうえで、炎症に対しては、飲み薬や吸入するタイプの消炎鎮痛薬や、ステロイド薬などが使われます。また、声帯に負担がかからない正しい発声をするために、声のリハビリテーション(音声治療)を行うこともあります。
すでに症状が悪化している場合や炎症が治まらない場合は、ポリープを取り除くための手術を行います。手術には、全身麻酔をしたうえで、口から顕微鏡(直達鏡)を挿入して行う方法(喉頭微細手術/LMS)と、声帯部分に局所麻酔をしたうえで、鼻から内視鏡(ファイバースコープ)を挿入して行う方法があります。
確実にポリープを切除し、再発を防ぐために、喉頭微細手術/LMSで行われることが一般的です。いずれの方法も手術後5日程度は声を出さずに、声帯を安静にしておく必要があります。
予防
声帯に過度な負担をかけないことが予防につながります。具体的には、大きな声を出しすぎないことや禁煙、のどの乾燥やウイルス感染(風邪など)を防ぐなどです。
声が出しにくいなど、声の調子が悪いときは、すでに声帯に炎症が起きている可能性があります。そのような場合は、ポリープへの悪化を防ぐため、声帯を酷使せず安静を保つようにしましょう。また、耳鼻いんこう科を受診し、適切な検査や治療を受けましょう。
医師紹介
1978年 関西医科大学耳鼻いんこう科入局。1982年 テネシー大学留学、1985年 関西医科大学大学院卒業、1986年 関西医科大学耳鼻咽喉科講師、1987年 医療法人いしべ耳鼻咽喉科を開業。耳鼻咽喉科専門医(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)、気管食道科専門医(日本気管食道科学会)。専門分野はアレルギー性鼻炎、中耳炎、耳鼻いんこう科一般。