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うま味調味料(化学調味料)で「脳の働きがおかしくなる」という主張の元となった「中華料理店症候群」とは?

公開日: 2026年05月27日
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料理の味を整えたり、“コク”や“深み”を出したりするときに使う「うま味調味料」。手軽かつ幅広く使える調味料として愛用している人も少なくないと思いますが、一方で、同調味料に対してはネガティブな声が長年つきまとってました。

「味覚が壊れる」、「脳の働きがおかしくなる」などなど…これらの主張はいかにして生まれたのか?また、実際のところ真偽はどうなのか?

この記事では、うま味調味料に関する誤解と事実についてご紹介します。

※本記事の内容は、田中越郎著『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』(ダイヤモンド社)の一部を抜粋のうえ再編集したものです

「うま味調味料=危険」は思い込み

一部の人から徹底的に嫌われているものに、うま味調味料があります。以前は「化学調味料」と呼ばれていましたが、今は「うま味調味料」と呼ぶようです。

食品中に食品添加物として入っている場合は「調味料(アミノ酸等)」などとラベルに記載されています。うま味調味料の代表がグルタミン酸ナトリウムで、昆布のうま味の主成分です。

うま味調味料が嫌われている理由を、グルタミン酸ナトリウムを例にして考察してみます。

主な理由としては、

  1. 石油から作っている
  2. 天然品ではなく不自然である
  3. 脳の働きがおかしくなる
  4. 味覚が狂う

などでしょうか。ではこれらを順番に解説していきます。

まず【1】「石油から作っている」ですが、これはまちがいです。確かに、数十年前に石油由来の原料から作っているものもありました。

このときは、石油が人間の食糧になれば、すなわち石油からたんぱく質を作り出すことができれば、この技術は食糧危機の救世主になるぞと賞賛を浴びていました。しかし現在は石油ではなくサトウキビを発酵させて作られています。サトウキビをエサにして、微生物にグルタミン酸ナトリウムを作らせているのです。つまりは誤解です。

【2】の天然品ではないので不自然であるという意味は、おそらく自然界のグルタミン酸はいいが、調味料のグルタミン酸は化学物質だからダメだ、という理論かと思います。

しかし、当然のことながら両者はどちらも同じ化学物質であり、物質としての差はありません。【2】は非科学的な感情論として切り捨てていいでしょう

「脳の働きがおかしくなる」の根拠とされる「中華料理店症候群」とは?

【3】の脳の働きがおかしくなるという話には、少し詳しい説明が必要です。

脳では、神経の指令を次の神経に伝えるために、グルタミン酸という物質も利用しています。したがって、調味料としてグルタミン酸ナトリウムを大量に摂取すると、脳の神経伝達がおかしくなるのではないかという理屈です。

この話の発端は、1968年に米国の医師が「自分は中華料理店で食事をすると、食後に頚の後ろからしびれ感が広がり、全身の脱力感や動悸が出る」という短い手紙を超有名な医学雑誌に投稿し、同じような症状を感じた人はいませんかと募ったことでした

この記事は「中華料理店症候群」として大反響を生み、ニューヨークタイムズまでもが参加するお祭り騒ぎになりました。おそらく中国の料理や店に対する偏見や人種差別も加わっていたのだろうと推察します。

科学的な論文としては、これまた有名な『サイエンス』という雑誌に「グルタミン酸ナトリウムをネズミに注射したら、脳の壊死、発育不全、肥満、不妊がおこった」ことが報告されました。

ただしこれは、注射したグルタミン酸ナトリウムの量がとてつもなく多く、体重50kgの人間に単純換算すると110gから290gもの量を17日間毎日注射していたことになります。グルタミン酸ナトリウムの危険性については、懐疑的な意見が多かったのですが、危険を煽った意見の方が注目されるのは、いつの時代も同じです。

その結果、危険性を強調した部分だけが目立つところに蓄積され、記憶されたまま現在に至っています。

しかしながら、正しい科学の目で見た場合は、グルタミン酸ナトリウムの人間に対する明らかな健康被害は報告されていません。

前記の中華料理店症候群の真の原因は不明ですが、おそらくグルタミン酸ナトリウム以外のものだと思います。

ということで、結論です。

常識的な常用量を守っている限り、グルタミン酸ナトリウムは安全だとみなして大丈夫でしょう。

「味覚が狂う」は個人の考え方次第だが…

最後に【4】味覚が狂う、を考察します。

昆布のダシはおいしいですよね。この昆布味の主成分はグルタミン酸ナトリウムです。しかし、決してそれだけではなく、それ以外の成分もたくさん混ざっています。

昆布の味は、グルタミン酸ナトリウムと雑多な成分の味とが全部足し合わされて、その総合的なバランスで昆布独特なおいしい味を作っています。そこにグルタミン酸ナトリウムだけを大きく突出させたら、微妙な総合味が崩れてしまい、人によってはおいしさが半減することがあるのは確かです

そもそも味というものは個人差が大きく、何をおいしく感じるかは人それぞれです。一般的には、子供のときから慣れ親しんだ味をおいしいと感じます。

子供のときから昆布でダシを取った料理を食べていたら、昆布ダシをおいしいと感じます。一方、子供のときからグルタミン酸ナトリウムいっぱいの料理を食べていたら、グルタミン酸ナトリウムをおいしいと感じる人になります。

そういう育て方がいいのか悪いのかは、個人の考え方次第だと思います。

なお余談ですが、おいしさの正体としてグルタミン酸ナトリウムを最初に発見し、最初に商品化したのは日本人です。

味覚の研究では日本は世界のトップクラスを走っています



【参考書籍】

『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』

『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』(田中越郎 著)
健康意識の高い人ほど、新しい情報を入手し、自分の生活に取り入れている。しかし、巷にあふれる健康情報は偏ったものが多く、どれを信じればいいのか判断するのは難しい。本書では、栄養学の専門家で、医師でもある著者に「栄養学的に正しい」最高の食事術を教えてもらう。「一生役立つ食事の新習慣」が身につく1冊。

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