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「睡眠不足で太る」ってどこまでホント?研究でわかっていることと体重管理の観点で考える適切な睡眠

公開日: 2026年06月09日
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最近よく眠れていないせいか、なんだか太ってきた気がする。そんな実感はありませんか。

「睡眠不足で太る」という話は、まったく根拠のない噂ではありません。ただ、寝ないだけで必ず太る、と言い切るのも少し乱暴です。研究から見えているのは、食欲や夜の食事、減量中の体の反応に関わるかもしれない、というところです。

医師紹介

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前田 佳宏院長
精神科/心療内科医
精神保健指定医

大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。

Xアカウント:@maemae_med(まえまえ医師)

睡眠不足で太りやすくなる、はどこまで本当か

睡眠時間と肥満の関連をまとめたCappuccioらは、45研究、約63万人のデータから、短時間睡眠(5時間未満)の人はそうでない人と比較して肥満の発症率が成人で1.55倍、子どもで1.89倍であったと報告しました。睡眠時間と肥満の関連を見た研究なので、睡眠不足だけが原因だとは言えません。

それでも、太りやすくなる道筋はあります。Taheriらは、5時間睡眠は8時間睡眠と比べ、満腹に関わるレプチンが15.5%低く、食欲に関わるグレリンが14.9%高いという予測値を報告しました。寝不足で「夜に甘いものがほしい」と感じるのは、気合いだけの問題ではないのかもしれません。

Spaethらの実験では、5晩の睡眠制限を行った結果、夜遅い時間の食事摂取が増え、平均体重も睡眠制限群で0.97kg増えて、 比べて毎晩10時間寝床にいた人たちでは0.11kgの増加に留まりました。ただ、5日寝不足なら約1kg脂肪が増える、という意味ではありません。

Nedeltchevaらの研究では、カロリーを制限した状態で、寝床にいる時間を8.5時間にした場合と5.5時間にした場合を比べました。睡眠が短い条件では、脂肪として減った量が1.4kgから0.6kgへ少なくなっていました。

睡眠不足は、やせる努力の質にも関係するかもしれません。

睡眠不足とは何か。時間と質、タイミングで見る

成人の睡眠不足は「7時間未満」をひとつの目安にします。AASMとSleep Research Societyの合意声明では、成人には毎晩7時間以上の睡眠が推奨されています。

ただ、睡眠不足は時間だけではありません。NHLBIは、眠る時間帯のずれ、睡眠の質の低さ、睡眠障害も「睡眠欠乏」に含めています。7時間寝床にいても、下記のような状態ですと睡眠が足りているとは限りません。

  • 何度も起きる
  • 息苦しさがある
  • 朝に回復感がない

CDCの年齢別の睡眠時間目安をざっくり確認しておきましょう。

年代

睡眠時間の目安

未就学児

10時間以上

小学生

9時間〜12時間

思春期

8時間〜10時間

成人

7時間以上

65歳以上

7時間〜8時間

高齢になると眠りは浅くなりやすいですが、短くてよいというより、質が変わる話として見た方が自然です。

睡眠不足のサインは、朝起きても回復した感じがない、日中に強い眠気がある、集中力や判断力が落ちる、夜遅くに食べる量が増える、といった状態です。子どもでは、機嫌の悪さ、落ち着きのなさ、朝起きられない、休日に大きく寝だめする、という形で出ることもあります。

体重管理のために、睡眠をどう整えるか

体重管理で見るなら、睡眠を「余った時間で取るもの」にしない方がいいです。前述のとおり睡眠が短いと、食欲が増え、夜遅くの摂取が増え、減量中に脂肪が落ちにくくなる可能性があります。

なので、体重増加や減量がうまくいかないことにお悩みの方は、自身の睡眠状況に問題がないかを意識してみるのはいかがでしょうか。

まずは時間です。平日は5時間台の睡眠しか取らず で、休日に長く寝て取り返しているなら、平日の不足が積み上がっている可能性があります。「就寝を15〜30分早める」「起床時刻を大きくずらさない」このくらいからで十分です。

次に質です。いびきや息苦しさがある、朝に頭痛やだるさがある、十分寝たはずなのに日中眠い。こうした場合は、睡眠時間だけで判断しない方がいいです。睡眠時無呼吸などが隠れていることもあります。

最後にタイミングです。寝る直前の大きな食事や飲酒、強い光、スマホを見続ける時間は、眠りを浅くしやすくなります。夜遅くまで起きていると、食べる機会も増えます。食欲を責める前に、食べやすい時間帯を長くしていないかを見る方が扱いやすいです。

睡眠不足で太る、という話はただの噂ではありません。一方で、睡眠不足だけが体重を決めるわけでもありません。食べる量だけを責めるより、眠れているかを見る価値があります。

 

■参考文献・根拠メモ

  1. Cappuccio FP, et al. Meta-Analysis of Short Sleep Duration and Obesity in Children and Adults. Sleep. 2008;31(5):619-626. 成人の短時間睡眠と肥満の pooled OR は1.55、子どもは1.89。ただし横断研究中心で因果推論には限界あり。
  2. Taheri S, et al. Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Index. PLOS Med. 2004;1(3):e62. 1,024人のWisconsin Sleep Cohort。5時間睡眠は8時間睡眠に比べ、レプチン低値・グレリン高値。
  3. Spaeth AM, et al. Effects of Experimental Sleep Restriction on Weight Gain, Caloric Intake, and Meal Timing in Healthy Adults. Sleep. 2013;36(7):981-990. 健康成人225人。5晩の睡眠制限で体重増加と夜間摂取増加を報告。
  4. Nedeltcheva AV, et al. Insufficient Sleep Undermines Dietary Efforts to Reduce Adiposity. Ann Intern Med. 2010;153(7):435-441. 10人の過体重成人。カロリー制限中、5.5時間睡眠機会では8.5時間条件より脂肪減少が少なかった。
  5. Watson NF, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult. J Clin Sleep Med. 2015;11(6):591-592. 成人は毎晩7時間以上の睡眠を推奨。
  6. NHLBI. Sleep Deprivation and Deficiency. 睡眠欠乏は睡眠時間不足だけでなく、睡眠の質、タイミング、睡眠障害も含む概念。
  7. CDC. About Sleep. 年齢別の推奨睡眠時間、睡眠の質、睡眠障害に関する一般向け解説。

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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。