期限切れの目薬、使っても大丈夫?眼科医が教える使用期限・保存方法・正しいさし方【医師解説】

外来でよく聞かれる質問です。
結論からいうと、期限切れの目薬や、いつ開けたか分からない目薬は、基本的に使わないほうが安全です。なぜなら、目薬は薬である前に、目に入る液体だからです。
液体である以上、時間が経てば雑菌が繁殖する可能性があります。しかも目薬は、皮膚に塗る薬ではなく、角膜や結膜という繊細な組織に直接入れるものです。
「まだ残っているから使う」のではなく、「目に入れてよい状態か」を考えることが大切です。
医師紹介
網膜内科を専門とし、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、近視性網膜疾患など、視力に大きく関わる網膜疾患の診療・レーザー治療に数多く携わっている。近年は、増加する子どもの近視に強い危機感を持ち、小児の近視進行を抑える治療や生活指導にも力を入れている。また、一般誌やWebメディアでの執筆・情報発信を通じて、目の健康に関する正しい知識の普及に努めているほか、子どもの近視対策を社会全体で考える必要性から、芦屋市政への提言も行っている。さらに、眼科教育サロンを主宰し、若手眼科医や医療スタッフの育成など、後進の教育にも積極的に取り組んでいる。
目次
目薬にはなぜ使用期限があるのか
目薬に使用期限がある理由は、大きく2つあります。
ひとつは、雑菌の繁殖を防ぎ、安全に使える状態を保つためです。
もうひとつは、薬の成分がきちんと効く状態を保つためです。
多くの目薬には、雑菌の増殖を抑えるために防腐剤が入っています。目薬は一度開封すると、使うたびに外気に触れます。さらに、容器の先がまぶた、まつ毛、目の表面、指などに触れると、そこから雑菌が入り込む可能性があります。
そのため、防腐剤は目薬を清潔に保つうえで重要です。
ただし、防腐剤をたくさん入れればよいわけではありません。防腐剤は、目の表面に負担をかけることがあります。長期間・高頻度に使うことで、しみる感じ、乾燥感、異物感、角膜上皮障害などにつながることもあります。
つまり目薬は
- 雑菌を増やさないこと
- 目の表面に負担をかけすぎないこと
のバランスを考えて作られています。
使用期限はそのバランスの中で、安全性、品質、効果が保たれる期間として定められています。
使用期限内でも、開封後はいつまでも使えない
外箱や容器に書かれている使用期限は、多くの場合「未開封で適切に保存されていた場合」の期限です。
一度開けた目薬は、使い方や保存状態によって清潔さが変わります。
防腐剤入りの目薬でも、開封後はおおむね1か月を目安にし、薬ごとの指示を優先してください。
防腐剤が入っていない目薬では、さらに短い期限が設定されていることがあります。たとえば、防腐剤無添加の人工涙液(人の涙に近い性質を持った点眼薬)であるソフトサンティアは、開栓後約10日を過ぎた使い残しは使用しないよう案内されています。
「使用期限内だから大丈夫」ではなく、「いつ開けた目薬か」も大切です。
開封した日を、外箱や容器に書いておくと分かりやすいでしょう。
防腐剤なしの目薬は何がよいのか
防腐剤なしの目薬のメリットは、目の表面への負担を減らせることです。
ドライアイで何度も人工涙液を使う方、角膜が傷つきやすい方、目がしみやすい方、コンタクトレンズを使っている方では、防腐剤の影響が問題になることがあります。
防腐剤なしの目薬には、いくつかのタイプがあります。
代表的なのは、開封後の使用期間が短いボトルタイプ、1回使い切りのミニ点眼タイプです。さらに、特殊な容器構造によって防腐剤なしで使えるPF製剤もあります。
PFとはPreservative Free、つまり防腐剤無添加という意味です。ロートニッテンのPF製剤では、フィルターや特殊な容器構造により、開封後の汚染を防ぐ工夫がされています。
ただし、防腐剤なしだから何となく安全、というわけではありません。
防腐剤が入っていない分、使用期限、保存方法、容器の扱い方をきちんと守る必要があります。
期限切れの目薬を使うと、どんなリスクがある?
期限切れの目薬を使ったからといって、必ず結膜炎や角膜炎を起こすわけではありません。
しかし、雑菌が繁殖していないと保証できません。見た目が透明でも、においが変わっていなくても、目に入れてよい状態かどうかは分かりません。
期限切れの目薬を使うことで、充血、目やに、痛み、まぶしさ、異物感、かすみ、見えにくさなどが起こる可能性があります。
また、薬の成分そのものが時間とともに変化し、十分な効果が期待できなくなる可能性もあります。
つまり期限切れの目薬は、「感染のリスクがあるかもしれない」だけでなく、「薬として十分に効かないかもしれない」目薬でもあります。
特に、手術後の点眼薬、抗菌薬、ステロイド点眼薬、緑内障点眼薬は、自己判断で古いものを使い回さないでください。
症状が似ていても、必要な薬が違うことがあります。
うっかり期限切れの目薬をさしてしまったら
うっかり期限切れの目薬を1回使ってしまった場合、すぐに大きな問題が起こるとは限りません。
まずは、その目薬の使用を中止してください。そのうえで、目の状態を注意深く観察しましょう。
痛み、強い充血、目やに、まぶしさ、異物感、かすみ、見えにくさなどが出てきた場合は、早めに眼科を受診してください。
特に、コンタクトレンズを使っている方、手術後の方、角膜に傷がある方では、自己判断で様子を見すぎないことが大切です。
開封後の目薬の保存方法
目薬の保存方法は、外箱や説明書に書かれている指示を守ることが基本です。
室温保存のものもあれば、冷所保存が必要なものもあります。すべての目薬を冷蔵庫に入れればよいわけではありません。
開封後は、次の点に注意しましょう。
- 直射日光を避ける
- 高温になる場所に置かない
- キャップをしっかり閉める
- 容器の先を目、まぶた、まつ毛、指に触れさせない
- 家族で共有しない
- 開封日を容器や外箱に書いておく
- 古い目薬を何となく保管し続けない
特に、車の中、窓際、夏場の高温になる場所は避けてください。
目薬の正しいさし方
目薬は、多く入れればよく効くわけではありません。
基本的に、1回の点眼は1滴で十分です。目薬がたまるスペースには限りがあり、何滴も入れても余った分はこぼれるだけです。
正しい点眼の基本は、次の通りです。
- まず、手を石けんと流水で洗います。
- 下まぶたを軽く下に引き、目薬を1滴さします。このとき、容器の先が目、まぶた、まつ毛に触れないように注意してください。
- 点眼後は、目をパチパチしないようにします。まばたきをすると、薬が流れ出てしまいやすくなります。
- しばらく目を閉じ、あふれた目薬は清潔なティッシュやガーゼで軽く拭き取ります。
複数の目薬を使っている場合は、続けてすぐにささず、5分程度あけるのが一般的です。
古い目薬を使うより、迷ったら眼科へ
赤い目だから、以前の抗菌薬。
かゆいから、以前のステロイド。
目が疲れるから、家族の目薬。
こうした使い方は、かえって病気を悪化させたり、診断を遅らせたりすることがあります。
目薬は身近な薬です。しかし、目に直接入る薬でもあります。
小さな1滴だからこそ、清潔さ、期限、保存方法、使い方の差が、治療効果と安全性に直結します。
期限切れの目薬を探して使うより、迷ったときは眼科で相談してください。
「まだ残っているから使う」のではなく、「目に入れてよい状態か」を考える。
それが、目薬と上手につき合うための基本です。
関連記事
※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。

