痛風とはどんな病気? 原因は食事にあり? 予防方法なども解説【病院なび】

医師紹介
1992年 東京大学医学部附属病院、1993年 東京都立墨東病院 および さいたま赤十字病院、1995年 東京大学医学部附属病院(2000年より 糖尿病・代謝内科助手)、2001年 カリフォルニア大学サンディエゴ校、2004年 福島県立医科大学(2004年より 内科学第3講座講師、2010年より 腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座准教授)、2016年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 糖尿病・内分泌内科先任准教授、2021年 順天堂大学医学部附属浦安病院(2021年より 糖尿病・内分泌内科先任准教授、2023年より 糖尿病・内分泌内科教授)。総合内科専門医(日本内科学会)、内分泌代謝科専門医(日本内分泌学会)、糖尿病専門医(日本糖尿病学会)、動脈硬化専門医(日本動脈硬化学会)、高血圧専門医(日本高血圧学会)、病態栄養専門医(日本病態栄養学会)。専門分野は糖尿病、内分泌内科、代謝内科。
目次
痛風とは
痛風は、血液中の尿酸値が高くなり尿酸の結晶が関節に蓄積することで、関節やその周辺に炎症を起こし、激しい痛みを感じるようになる病気です。痛風の症状は、突発的に起きることから「痛風発作」と呼ばれ、足の親指の付け根などが赤く腫れて激痛におそわれ、2~3日間痛みが続く場合もあります。足の親指の付け根以外にも、足関節、足の甲、アキレス腱、膝関節、手関節などが痛くなり「風が吹いても痛い」といわれたことから痛風と呼ばれるようになりました。
一般的に30歳代以降の男性と閉経後の女性に多い病気ですが、稀に30歳未満で発症した場合は重症になるケースもみられます。重症化すると痛風結節になったり、腎臓に尿酸が蓄積して合併症を引き起こしたりするなど命に関わることもあるので、日頃の生活を見直しながら尿酸をコントロールするのが大切です。
痛風の原因
痛風は、体の中の尿酸が過剰になることが原因で起こります。通常、尿酸は血液に溶けて存在し多くなると尿や便とともに排泄されますが、排泄が追いつかないほど尿酸が増えると血液中の尿酸濃度が上昇します。この尿酸が高い状態が「高尿酸血症」で、血液に溶け切れなかった尿酸は結晶化して関節や組織にたまっていきます。そして、関節にたまった尿酸結晶がはがれ落ちるときに免疫細胞が反応し、炎症が起きる物質が出ることで痛みを感じたり赤く腫れたりします。いったん痛みが引いて炎症がおさまっても、関節内に尿酸があれば再びはがれ落ちて痛みや腫れが再発することもあります。
痛風の原因となる「高尿酸血症」とは
血液中の尿酸が高い状態で、尿酸値が7mg/dl以上の場合は高尿酸血症と診断されます。女性は女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされるため、圧倒的に男性に多い疾患です。尿酸が高いだけでは自覚症状はありませんが、高尿酸血症がある人は痛風だけでなく、肥満や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のリスクも高くなります。
高尿酸血症には食生活が大きく関わっており、下記に当てはまる人は高尿酸血症になりやすいと考えられています。
- 30歳以上の男性
- 肥満の方
- 激しい運動をする方
- 魚卵などプリン体が多く含まれる食べ物を好む方
- 甘い清涼飲料水やお酒をよく飲む方
- 痛風の近親者がいる方
- ストレスが多い方
- 腎臓に疾患のある方
痛風の症状
痛風の初期症状は、突然の激痛を感じて関節などが赤く腫れ、熱を持つのが特徴です。痛風になりやすいのは足の親指の付け根の関節ですが、足首やかかと、手の関節などに起きることもあります。痛みは夜に感じることが多く、しだいに強くなり、特に関節を動かしたり触れたりしたときに悪化します。1日で治ることはなく、大半は発症から24時間前後で痛みのピークに達し、その後7〜10日かけて改善します。さらに、痛みと合わせて、発熱、全身の倦怠感、心拍数の上昇(頻脈)などがみられる場合もあります。
また、痛風発作を何度か経験していると、前兆として、関節の違和感やこわばり、軽い痛み・熱感、倦怠感や微熱などを感じる人もいます。前兆を感じたときは、安静にする、水分補給をする、患部を冷やすといった処置が有効です。
痛風結節
痛風結節は、痛風が長期間続くことで尿酸の結晶が皮膚の下にたまり、瘤(こぶ)のように腫れ上がる疾患です。足の親指の付け根にできることが多く、それ以外にも手足の関節、耳の軟骨、アキレス腱などにもできます。通常、痛みはありませんが、炎症を起こしてしまうと痛みを伴うようになります。また、結節が大きくなって破裂すると、白いチョークのようなかたまりが皮膚を破って排出され、傷になることがあります。さらに、痛風結節によって関節が変形したり、変形性関節症になったりすることもあります。痛風結節は慢性化しやすいため、できるだけ早期に発見して治療することが重要です。
痛風の合併症
痛風発作を繰り返しているうちに慢性化すると、関節だけでなく臓器にも影響が及んできます。もっとも影響を受けやすいのは尿酸を排泄している腎臓で、ここに尿酸結晶が沈着すると腎機能が低下して、尿路結石症や尿毒症を引き起こします。また、高尿酸血症から糖尿病や脂質異常症、高血圧を合併しやすくなり、これらの生活習慣病は動脈硬化を招き、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患のリスクが高まります。
痛風の診断基準
診断では、医師の診察と合わせて血液検査や尿検査などを行い、尿酸値や関節内の尿酸結晶の有無を調べます。
血中の尿酸値を測定。尿酸値が7.0 mg/dl以上の場合は高尿酸血症と診断される。 | |
尿の中に出ている尿酸量などを測定。検査は、24時間で出るすべての尿から尿酸量を調べる方法と、60分間で出るすべての尿から尿酸量を調べる方法があり、数値によって以下の3タイプに分けられる。 ・尿酸排泄低下型(腎臓からの尿酸の排泄が悪いタイプ) ・尿酸産生過剰型(尿酸が過剰につくられるタイプ) ・混合型(尿酸排泄低下型と尿酸産生過剰型が混在しているタイプ) | |
関節内の尿酸の濃度を確認したり、炎症の程度を推定。腎臓を観察して腎結石などの合併症を調べる場合もある。 |
痛風は、高尿酸血症が持続し関節内に尿酸-ナトリウム結晶が析出してしまうことによる急性関節炎です。 痛風発症には、高尿酸血症が必須ですが、痛風と高尿酸血症は同意ではありません。
痛風の診断は、以前から高尿酸血症を指摘され、中足趾節関節(ちゆうそくしせつかんせつ)や足関節周囲に発赤や腫脹を伴う急性関節炎が出現したときに診断されます。このほかに、関節を注射針で穿刺して関節液を確認する方法があります。発作を起こしている関節液中に尿酸-ナトリウム結晶が確認されれば痛風と診断されます。痛風診断でもっとも確実な検査とされていますが、痛みのある関節に針を刺すため患者さんの苦痛が大きく、必ず行う検査ではありません。
痛風の治療方法
痛風は、「急性痛風発作の治療」と「長期的な尿酸管理」の2つが基本的な治療アプローチです。痛風発作が出ているときには、炎症を抑える効果のある非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤で症状をおさえます。患部の炎症が落ち着いて痛みが引いたら、血液中の尿酸値を低くする内服薬と生活習慣の改善で尿酸コントロールを開始します。薬には、体内の尿酸の生成をおさえるものと、尿酸を排出しやすくするものがありますが、どちらも長期間の服用が必要です。痛風の発作が起こらないからと服用を止めると再発しやすくなるので医師の指示に従ってください。
また、日常生活では、尿酸のもととなるプリン体を多く含む食品を避け、食べ過ぎや運動不足を改善するだけでも尿酸値を下げることができます。痛風治療では、薬の服用と生活改善を並行していくのが重要です。
痛風の予防方法は主に6つ
痛風の原因となる尿酸値を上げないように、食事や生活面では下記を心がけましょう。地道に生活習慣を改善することが予防の第一歩です。
過食を控える
尿酸のもとになるプリン体は、高カロリー食や動物性食品に多く含まれています。また、肥満は尿酸の排出を悪くして体内の尿酸量が増えるため、食べ過ぎに注意しましょう。
プリン体を多く含む食品を控える
食事では、プリン体を多く含む食品は控えめにしましょう。特に下記の食品はプリン体が多いので注意が必要です。
牛・豚・鶏レバー/イワシやアジなどの干物/エビ/タコ/白子/アンコウの肝/アルコール類(ビール、日本酒、紹興酒、ワイン)など
飲酒は適度に
アルコール飲料は尿酸値を上げる作用があり、特にビールは尿酸値が上がりやすいので適量(ビールなら1本)を守りましょう。週に1日はお酒を飲まない休肝日をつくり、肝臓を休ませてください。
水分は十分に
水分を十分にとることで尿酸が尿に溶け出しやすくなり、排出を促して痛風発作を防ぎます。1日2リットルを目安に、清涼飲料水やお酒ではなく、水やお茶をこまめに飲むようにします。
適度な運動を習慣に
運動は肥満を防ぎ、尿酸値を下げる効果があります。ただし、激しい運動で大量に汗をかくと体内から水分が失われて尿酸値が一時的に上昇するため、ウォーキングなどの軽い運動(有酸素運動)がおすすめです。水分補給をしながら定期的に運動しましょう。
ストレスは上手に解消
ストレスは尿酸値を上昇させる原因の一つです。人と話す、スポーツで体を動かす、趣味に没頭するなど、何でもよいので自分に合ったリフレッシュ方法を見つけ、心身ともにリラックスすることが大切です。
まとめ
かつては「贅沢病」とも呼ばれていた痛風ですが、尿酸が上がらないように対策し、健康的な食事と適度な運動を心がければ予防できる病気です。特に30歳以上の男性は定期的に検診を受け、尿酸値をチェックするようにしましょう。痛風を発症した場合は、「時間が経てば治るから」と放置せず、速やかに受診し適切な治療で進行を防いでください。
[出典・参考文献]
・MSDマニュアル家庭版「痛風とピロリン酸カルシウム関節炎/痛風」
・公益社団法人 日本整形外科学会「痛風」
・全国健康保険協会「気になる病気辞典【痛風】」