心筋梗塞、脳梗塞リスク増の可能性も…放置すると命に関わるかもしれない「口」のトラブルとは【医師解説】

見逃してはいけないサイン、早めに受診すべき症状について、医療法人社団D&Jの平野大輔 理事長に解説してもらいました。
医師紹介

2009年新潟大学歯学部卒業。2014年3月「地域に貢献する医院でいよう」「100年つづく医院をつくろう」「一生感謝される人材育成をしよう」という3つの理念を掲げ、医療法人社団D&Jを設立。新潟市内に、ひらの歯科医院、新潟西歯科クリニック、入船みなと歯科の3つのクリニックを構え、口の中が健康であるからこそ、全身が健康になるということを患者様一人ひとりにお伝えしている。
目次
放置すると命に関わる可能性がある症状について教えてください
口の中に生じる、ちょっとした違和感には注意が必要です。

なぜ「歯周病」が命に関わるかもしれないのでしょうか?
心筋梗塞・狭心症、脳梗塞、誤嚥性肺炎のリスクを高める可能性があります。

歯周病は放置すると、命に関わる病気のリスクを高める可能性があります。その理由は、歯茎の傷口から侵入した細菌や炎症物質が、血流に乗って全身の血管や臓器を駆け巡るためです。
歯周病が命を脅かす、重大な3つの病状を解説します。
1.心筋梗塞・狭心症(虚血性心疾患)
歯周病菌が血液に入り込むと、心臓に酸素や栄養を送る「冠動脈」の壁にこびりつき、血管を狭くするプラーク(脂肪の塊)の形成を加速させると考えられています。
歯周病菌の刺激によって血管内にできたプラークが剥がれ落ちると、そこで急激に血栓(血の塊)が作られます。これが心臓の血管を完全に詰まらせるのが「心筋梗塞」です。
日本臨床歯周病学会などのデータでも、歯周病の人はそうでない人に比べて、心臓病を発症するリスクが約2~3倍に跳ね上がることが分かっています。
2.脳梗塞(脳血管障害)
心臓と同じメカニズムが、頭の血管で起きた状態です。
動脈硬化を起こして脆くなった脳の血管に血栓が詰まり、脳細胞が壊死します。一命を取り留めたとしても、寝たきりや深刻な麻痺などの後遺症が残るリスクが非常に高い病気です。
歯周病が重度であるほど、脳梗塞の発生リスクが高くなる可能性があります。
3.誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
おもに高齢者や、飲み込む力が衰えた方に起こる危険な肺炎で、高齢者では命に関わることも少なくありません。
健康な人であれば、睡眠中などに唾液が気管に入りそうになるとむせて吐き出せます。しかし加齢などでその機能が落ちていると、大量の歯周病菌を含んだ唾液が気づかないうちに肺へと流れ込んでしまいます(誤嚥)。
そして、肺の中で歯周病菌が増殖することで激しい肺炎を引き起こしてしまうのです。
口の中のたった数ミリの歯周ポケット(溝)は、全身の血管へと直結する「危険な入り口」でもあるのです。
「歯周病」で受診する目安を教えてください
早めの受診が必要な「危険なサイン」と受診を推奨する「初期のサイン」があります。

以下の症状が1つでもあれば、歯周病が中期~重度にまで進行している、あるいは急激に悪化している証拠です。早急な治療が必要になるため、できるだけ早めに歯科を受診してください。
■早めの受診が必要な「危険なサイン」
1.歯がグラグラ揺れる
歯を指や舌で押すと動く、噛むと歯が浮くような感じがして力が入らない。
2.歯茎から膿(うみ)が出る
歯茎を指で押すと白い膿が出たり、口の中が常に生臭い、しょっぱい味がする。
3.歯茎がブヨブヨに腫れて痛む
体調が悪い時や疲れている時に、歯茎が大きく腫れてズキズキ痛む。
4.歯が長く伸びたように見える
歯周病で骨が溶け、歯茎が下がって歯の根元が露出してきた状態。
5.歯並びが変わってきた
前歯が前方に出てきて隙間(すきっ歯)が空いてきた(歯を支える骨が耐えきれず、歯が動いています)。
また、緊急性は高くありませんが、以下のような症状は歯周病の「初期サイン」の可能性も。「まだ痛くないから大丈夫」と油断せず、進行して骨が溶ける前に受診をおすすめします。
■見逃し厳禁!受診を推奨する「初期のサイン」
1.歯磨きをすると血が出る
歯ブラシに血がついたり、うがいをした水にピンク色の血が混ざる。
2.朝起きた時、口の中がネバネバする
寝ている間に歯周病菌が増殖しているサインです。
3.周囲から「口臭」を指摘された
歯周病菌が作り出すガス(腐った玉ねぎや生ゴミのような臭い)が発生しています。
4.歯茎が赤紫色をしている
健康な歯茎は「薄いピンク色」で引き締まっています。赤く丸みを帯びて腫れているのは炎症の証拠です。
5.冷たい水が歯茎に近いところでしみる
歯茎が少し下がり始めて、デリケートな歯の根元が見え始めている可能性があります。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。

リンゴをかじった時や、いつも通りに歯磨きをした際、泡にうっすらとピンク色の血が混ざる。鏡をよく見ると、以前より歯茎が赤っぽく腫れて丸みを帯びていたり、冷たい水が急にしみたりする。
これらはすべて、歯周ポケットの中で細菌が繁殖し、炎症を起こしている状態、いわゆる「歯周病」が疑われるサインです。
さきに紹介した症状のほかにも、朝起きた時の口の中のベタつき、なんとなく続く口臭、歯茎のむずがゆさや重だるさも、歯周病の兆候のひとつ。
いずれの症状も痛みが小さいため、多くの人が寝不足や疲れのせいにして見過ごしがちですが、将来的に歯を失い、全身の健康を脅かす大病へとつながる、見逃してはならない危険信号でもあるのです。