柿を毎日食べるとどうなる?食べすぎで注意したい「柿胃石」と意外な落とし穴

大きくなると胃潰瘍や腸閉塞などにつながることもあるため、とくに一度にたくさん食べる場合や、胃の手術を受けたことがある人などは注意が必要です。
柿にはどのような栄養があるのか、毎日食べても問題ないのか。食べすぎによるデメリットや適切な食べ方について、林外科・内科クリニックの林裕章理事長に解説してもらいました。
医師紹介
国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、その人その人に合った「人」を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域のかかりつけ医として総合診療を行っている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
目次
柿にはどのような健康効果が期待できるのでしょうか?
柿は果物の中でもビタミンCが多く、生の甘柿100gに70mg含まれます(日本食品標準成分表八訂増補2023年)。
成人の推奨量は1日100mgなので、可食部150gほどの中くらいの1個でほぼ満たせます。
ビタミンCは水に溶けるため、まとめて食べても体に貯めておけず、毎日少しずつが理にかなっています。

柿の健康効果をより引き出すために、食べ方や摂り方で意識すべきポイントはありますか?
健康な成人に「何個まで」という医学的な上限はありませんが、果物全体で1日200gを目安に、中くらい1個程度と考えると分かりやすいでしょう。

短時間に何個もまとめて食べるのは避けてください。空腹時の大量摂取も、タンニンが胃酸と強く反応して柿胃石ができやすくなるため勧められません。食後のデザートとして、よく噛んで食べましょう。
皮は消化されにくく胃石の材料になるため、むいて食べるのが安全です。中くらい1個の糖質は約21gと、ごはん軽く半膳ほどで、「果物だから太らない」わけではありません。
寝る直前に多く食べれば胸やけや胃もたれの原因にもなります。血糖を管理している方は、主治医や管理栄養士から示された量を守ってください。
干し柿は水分が抜けるぶん栄養が凝縮しますが、糖質も同じです。
1個(約37g)で約101kcal、糖質21g。生の柿1個分の糖質が4分の1ほどの大きさに詰まっています。ビタミンCは100gあたり2mgとほとんど残らず、逆にカリウムは670mgと生の約4倍になります。
血液中のカリウムが上がりすぎると、手足のしびれや力が入らない感じ、ひどいときには危険な不整脈につながることがあります。
腎機能が低下してカリウム制限を受けている方や、カリウムを溜めやすい薬を飲んでいる方は、1日何個までかを主治医と決めておくと安心です。
柿は毎日食べても問題ないのでしょうか?また、食べ過ぎた場合に考えられるデメリットはありますか?
健康な方が適量を毎日食べる分には問題ありません。ただし何個も続ければ糖質とカロリーの摂り過ぎになります。
食べ過ぎで起こりやすいのは便秘です。タンニンには腸を引き締めて水分の分泌を抑える働きがあり、下痢止めの薬にも使われています。

知っておいていただきたいのが「柿胃石(かきいせき)」です。
柿のタンニンが胃酸と反応し、食べ物のカスや繊維、皮を巻き込んでコンクリートのように硬い塊になったものを指します。
胃の手術を受けた方、糖尿病で胃の動きが落ちている方、歯が悪く十分に噛めない方に起こりやすく、胃の出口(幽門)を切除していると塊が小腸へ落ちて腸閉塞になりやすいことが知られています。
2025年には、そうした持病のない93歳の男性が毎日2個食べ続けて小腸が詰まり、5cm大の塊を手術で摘出した例も報告されました。塊の98%以上がタンニンでした。
できはじめは症状がなく、健診の胃カメラで偶然見つかることも珍しくありません。大きくなると胃の出口をふさぎ、潰瘍や出血、腸閉塞を招きます。
柿をよく食べている時期に強い腹痛、繰り返す嘔吐、お腹の張り、便もガスも出ないといった症状が出たら、様子を見ずに受診してください。黒いタール状の便や吐血は出血のサインです。
高齢の方は「食欲がない」「吐く」が続くだけでも受診の理由になります。受診の際は「最近、柿をよく食べていた」と自分から伝えてください。画像で胃の腫瘍と見間違われることがあり、この一言で診断までの時間が変わります。
治療にはコーラを使う溶解療法もありますが、完全に溶けたのは報告全体で4人に1人(23%)ほど。ほかの植物性の胃石の6割に比べて格段に硬く、砕けた破片が小腸に詰まって手術になった例もあります。自宅で試さず、必ず医療機関で治療を受けてください。
とは言え、柿は「柿が赤くなると医者が青くなる」といわれるほど、本来は恐れる必要のない果物です。体調に合わせて適量を楽しんでください。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。


そのほかにも、血圧対策を助けるカリウム170mg、食物繊維1.6gも含みます。
オレンジ色のもとであるβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイドにも抗酸化作用がありますが、「柿を食べれば病気を防げる」といえるほどの根拠はありません。
さらに柿には、渋み成分であるタンニンをはじめとするポリフェノールが含まれます。
一部の研究でコレステロール低下作用が報告されていますが、通常の生の柿を数個食べるだけで効果があるとは言えません。なお、この渋み成分のタンニンが、記事の後半でお話しする「柿胃石」の主役になります。
柿の価値は特別な薬効ではなく、果物として手軽に栄養を補える点にあります。「健康日本21(第三次)」は果物を1日200g摂ることを目標としていますが、これは上限ではありません。
2023年の国民健康・栄養調査では20歳以上の摂取量が平均93gと半分に届かず、まったく食べない人が約4割います。しかし、中くらいの柿1個でその日の目標はほぼ達成できます。
柿の話題では「食べ過ぎ注意」が語られがちですが、日本人全体で見れば、足りていないほうが問題とも言えます。