なぜ「座りっぱなし」で死亡リスクが上昇? 医師が教える長時間座ることの危険性

座りっぱなしが健康に及ぼす影響や、デスクワーク中に取り入れたい対策について、まえだ整形外科リウマチクリニックの前田 俊恒院長に解説してもらいます。
医師紹介
肩こり・腰痛・関節痛などの慢性疼痛から、関節リウマチ、骨粗鬆症、スポーツ障害まで幅広く診療。日常生活に根ざした運動指導・セルフケアの啓発にも力を入れている。肩や膝、腰の痛みなど日常の体の不調や身近な健康情報についても、医学的根拠に基づいた分かりやすい解説を行っている。
目次
長時間「座りっぱなし」で過ごすことは、健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
長時間座ったままでいると、立ったり歩いたりしているときに比べて、足やお尻などの大きな筋肉を使う機会が少なくなります。当然、体を動かす量や消費するエネルギーも少なくなります。

「○時間以上座り続けると危険」など、座りっぱなしの目安となる時間はあるのでしょうか?
世界の公衆衛生研究によると、1日の座位時間が4時間未満の成人と比べ、1日合計8時間以上座っている人は死亡リスクが顕著に上昇し、11時間を超えると死亡リスクが40%も高まることが示されています。

日本人は世界的に見ても座っている時間が長い国民(平日平均約7時間以上)とされており、デスクワーカーの多くが無自覚のうちに危険域に達しています。
体への影響は、1回に何時間座り続けたかだけではなく、1日のうち合計でどのくらい座っているか、普段どのくらい運動しているか、年齢や体力などによっても変わります。
そのため、「8時間までなら大丈夫」「11時間を超えたら危険」というように考えるよりも、座っている時間が長くなりすぎないようにし、途中でこまめに体を動かすことが大切です。
普段から運動や筋トレをしている人でも、仕事などで長時間座りっぱなしだと健康への悪影響はあるのでしょうか? 運動をしていれば、座りっぱなしのリスクを帳消しにできますか?
「運動しているから、仕事中は何時間座っていても大丈夫」というわけではありません。

ウォーキングやジョギング、筋力トレーニングなどを習慣にすることは、筋力や体力を維持し、生活習慣病を予防するうえでも非常に大切です。
一方で、運動する習慣がある人でも、それ以外の時間のほとんどを座って過ごしている場合には、長時間座ることによる健康への影響が完全になくなるとは言い切れません。
例えば、朝に30分ジョギングをしていても、その後、通勤や仕事で長時間座り、帰宅後もテレビやスマートフォンを見ながら何時間も座っていると、1日全体ではかなり長い時間を座って過ごしていることになります。
ですから、「運動すること」と「座りっぱなしを減らすこと」の両方が大切です。
もちろん、普段からしっかり運動していることには大きな健康上のメリットがあります。長時間座ることによる健康への影響を小さくすることも期待できます。
「朝や夜に運動しているから大丈夫」と考えるだけではなく、仕事中にも、ときどき立つ、少し歩くなど、こまめに体を動かすことを意識していただくのがおすすめです。
デスクワークなど、どうしても座っている時間が長くなる人は、どのくらいの頻度で立ったり体を動かしたりすればよいのでしょうか?
デスクワークの方は、まず30分程度を一つの目安にして、座りっぱなしを一度中断することから始めてみるとよいでしょう。

ただし、「30分を超えて座ると危険」という意味ではありません。会議や仕事の都合で難しければ、30分~1時間に一度でも構いません。大切なのは、何時間も同じ姿勢のまま過ごさないことです。
立ち上がったからといって、本格的な運動をする必要はありません。
例えば、立って伸びをする、飲み物を取りに行く、トイレまで歩く、コピーを取りに行くなど、1~数分程度でも構いません。電話をするときは立って話す、エレベーターではなく階段を使う、少し離れたトイレを利用するといった工夫もおすすめです。
座って仕事をしている間も、足首を動かす、膝を伸ばす、肩を回すなど、簡単な運動を取り入れることができます。
ただし、座ったままの運動だけで終わらせず、可能であれば実際に立って歩く時間もつくりましょう。
また、首や肩のこり、腰痛を防ぐという点では、デスク周りの環境も大切です。椅子の高さを調整して足の裏が床につくようにする、パソコンの画面を見やすい位置にして、頭を前に突き出さないようにするなどの工夫も有効です。
そして、仕事中にこまめに立つこととは別に、ウォーキングなどの運動を日常生活に取り入れることも大切です。
座りっぱなし対策に、特別な運動器具や難しい体操は必要ありません。
「長く座り続けない」「ときどき立つ」「少し歩く」「普段から体を動かす」
まずはこの4つを意識して、できることから続けてみてください。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。


こうした「座っている時間が長く、体を動かす時間が少ない生活」が続くと、肥満や糖尿病、心臓や血管の病気などのリスクが高くなることが、さまざまな研究から分かってきています。
また、整形外科でよく問題になるのが、腰痛や首・肩のこりです。
座ること自体が直接の原因とは限りませんが、パソコン作業などで長時間同じ姿勢を続けていると、首や肩、腰の筋肉に負担がかかり、痛みやこわばりを感じやすくなります。
とくに注意したいのが、前かがみになったり、頭を前に突き出して画面をのぞき込んだりする姿勢です。このような姿勢を長時間続けると、首や肩、腰への負担が大きくなります。
また、高齢の方では、座っている時間が長くなり、歩いたり体を動かしたりする時間が減ることで、足の筋力や体力が落ちてしまうことも心配です。
大切なのは、「座ってはいけない」ということではありません。問題なのは、長時間ほとんど体を動かさない状態が続くことです。
仕事で座る時間が長い方も、ときどき立ったり歩いたりして、座りっぱなしの時間を減らすことを意識してみてください。