【訃報】俳優・中島ゆたかさんが「大腸がん」で逝去。早期は自覚症状がほとんどない「大腸がん」の原因、症状について解説(医師監修)

そこで、大腸がんとはどのようながんなのかについて、MediQAで過去に掲載した記事「大腸がんの原因・症状・治療法と予防のポイントを解説」を再編集のうえ、ご紹介します。
医師紹介
2006年 東京歯科大学市川総合病院臨床研修医、2008年 国立病院機構霞ヶ浦医療センター、2009年 足利赤十字病院、2010年 慶應義塾大学医学部外科学教室 一般・消化器外科助教授、2013年 足利赤十字病院外科、2015年 立川病院外科医長、2018年 足利赤十字病院外科副部長。日本消化器外科学会消化器外科指導医、日本外科学会外科指導医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡指導医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病指導医・評議員、日本内視鏡外科学会内視鏡外科技術認定医・ロボット支援手術プロクター、日本腹部救急医学会腹部救急認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本臨床外科学会評議員。専門分野は大腸、肛門系疾患。
目次
大腸がんとは?原因、症状などについて
大腸は、盲腸、結腸、直腸をまとめた呼称です。そして大腸がんは、この部分(盲腸、結腸、直腸)に悪性の腫瘍が発生する疾患です。
環境要因、遺伝要因で発生、それ以外のケースも
発生には、環境要因と遺伝要因などがあるとされています。
【環境要因】
いわゆる食生活の欧米化は、大腸がん発生のリスクを高めると考えられています。具体的には、乳製品などの動物性の脂質や、赤身肉などの動物性のたんぱく質の摂り過ぎなどです。
そのほか、生活習慣と関わりのある要因も多く、喫煙や飲酒、肥満がそれにあたります。また、運動不足は大腸がんの中でも結腸がんのリスクが高くなるとされています。
【遺伝要因】
生まれつき、大腸がんになりやすい遺伝性の疾患を受け継いでいる場合があります。なかでも、リンチ症候群や家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)がよく知られています。
【その他】
大腸ポリープや大腸の粘膜に慢性的に炎症を起こす潰瘍性大腸炎などから、ポリープや炎症部分ががん化することもあります。
大腸がんの予防方法は?
大腸がんの予防としては、動物性の脂質やたんぱく質の過剰な摂取は控え、バランスの良い食事を摂りましょう。とくに、食物繊維やカルシウムの摂取は、大腸がんの予防に有効であると考えられています。
そのほかのリスク要因に関連して、禁煙や過度な飲酒を控える、肥満の予防・解消、適度な運動など生活習慣全般を整えることも有効です。
また、便潜血検査や大腸内視鏡検査は、死亡率を減少させる効果がある有効な検査です。リスクの高くなる40代くらいからは、これらの検査を定期的に受けることも推奨されます。
早期は自覚症状がほとんどなし、注意すべき点は?
早期では自覚症状がほとんどありません。進行すると症状があらわれることが多くなってきます。がんができる場所によってあらわれる症状は異なりますが、主な症状には以下のようなものがあります。
進行したときの主な症状
- 腹痛
- 便秘/下痢(便秘と下痢を繰り返す)
- 血便(便の表面に血や粘液がつく)
- 下血(赤/赤黒い便が出る)
- 便が細くなる
- 残便感
- 体重減少
- 貧血
- 腸閉塞
など
なお、大腸がんの検査・診断は、便の表面を採取して行う便潜血検査や血液検査、肛門から内視鏡を挿入して大腸全体(盲腸、結腸、直腸)を調べる大腸内視鏡検査などによって、がんの疑いや腫瘍の有無を確認します。このような検査でがんが疑われた場合は、細胞や組織の一部を採取して生体検査が行われます。
大腸がんと確定した後は、転移がないかを確認するためにCT検査やMRI検査などの画像検査を行います。さらに手術を行う場合には、大腸に造影剤を入れて行う画像検査(注腸造影)などで、がんの深さや位置などを調べます。
早期に適切な治療をすれば完治も
大腸がんは早期に適切な治療をすれば、完治が望めるがんです。
治療の中心となるのは「内視鏡治療」「外科的治療」です。そのほかには「薬物治療」などがあります。
以下、詳しく解説します。
【内視鏡治療】
大腸内視鏡でがんを取り除きます。がんが小さく浅い、早期の大腸がんが対象です。予想以上にがんが深かった場合や取り残しがある場合には、後日、外科的治療が行われることもあります。
【外科的治療】
腹腔鏡による手術、または腹部を切開して行う開腹手術があります。がんが大きく、深いことが疑われる場合が対象です。転移や転移のリスクがある部分を含めて、がんから十分な距離をとって切除します。
すでにがんが周辺臓器に広がっていたり、リンパ節などに転移していたりする場合は、それらの切除も同時に行われることがあります。がんのある部位や状態によっては、一時的または永久的な人工肛門を作ることがあります。
【薬物治療】
抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使った治療です。切除することが難しい場合に進行を抑えたり、症状をコントロールしたりする目的で行われます。また、「外科的治療」の補助的な治療として、がんが取りきれなかった場合や再発・転移を抑えるために行われることもあります。
関連記事
※本記事は特定の病気について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。

